打撲の病態と治療についての解説

打撲ってどんな状態なんだろう?
打撲は放っておいても治るんじゃないの? 身体を物にぶつけた際に起こりやすい打撲。サッカーやラグビーなどのコンタクトスポーツでも起こりやすいケガの1つです。打撲は放置しておいても治る軽いものから治療しなければ命に関わる重篤なものまであり、自己 判断では危険な場合があります。

今回の記事では打撲の病態と治療について解説していきます。

打撲の病態について

打撲とは、転倒や物に強くぶつかるなど外から物理的な強い衝撃を受けることによって軟部組織(腱や靭帯、筋 膜、脂肪組織など骨組織以外の組織)や骨組織が損傷した状態(骨挫傷)を指します。「打ち身」とも呼ばれ、切り傷などの傷口がない点が特徴です。

打撲は切傷や刺傷などのように外への出血がないため軽傷と思われがちですが、骨折していたり筋肉などの皮下組織が強いダメージ受けていたりする場合もあります。特に頭部打撲は脳が損傷を受けているケースがあるため注意が必要です。

「筋膜外血腫」と「筋膜内血腫」について

打撲は出血の状態で以下の2つに分けられます。

  • 筋膜外血腫
  • 筋膜内血腫 各項目について解説していきます。

「筋膜外血腫」は筋膜が破れて筋肉組織の外に出血(体内での内出血です)が起きている状態で、打撲の大半を 占めています。筋膜外血腫は内出血した血液が溜まることがなく体内で吸収されやすいため、治癒にかかる時間 は比較的短いともいわれます。

逆に「筋膜内血腫」は筋膜が破れずに筋肉の内部で血液が溜まってしまう珍しいケースで、受傷から 48 時間後 に患部が腫れてくるといわれています。

筋膜内血腫は「骨化性筋炎」という深刻な病気につながるケースがある ため、打撲の診断では「筋膜外血腫」と「筋膜内血腫」を見分ける必要があります。「骨化性筋炎」とは、筋肉内に溜まった血液に何かしらの刺激が加わると骨化(骨に変化する)してしまうといわれる病気で、まだ原因が完全には解明されていない症状です。

不必要なところに新しく骨ができてしまうと、その骨を小さくしたり消した りすることはできないので、その骨が原因で痛みなどが出る場合は手術で摘出しないといけません。

筋膜内血腫だとわかった場合は、血腫が引くまで患部に刺激を与えないことが現代医学での共通認識となっています。

打撲の主な症状について

打撲では以下のような症状が出るとされています。

  • 患部の痛み
  • 腫れ
  • 内出血(患部の皮膚が変色する)
  • 熱感
  • 動作時の痛み
  • 動作がやりづらくなる
  • 視力の低下(目の打撲)
  • 目からの出血(目の打撲)
  • 頭痛(頭の打撲)
  • 意識障害(頭の打撲)
  • 健忘や記憶障害(頭の打撲)
  • めまいやふらつき(頭の打撲)
  • 麻痺(頭の打撲)
  • しびれや吐き気(背中、首、頭の打撲)

打撲では、強く打った体の部位によってさまざまな症状が出ます。特に目や頭、首、背骨の打撲は重篤な状態になる可能性もあるため、必ず医療機関を受診しましょう。

打撲の診断について

打撲の診断は以下の方法で行われます。

  • 診察
  • 単純 X 線検査(レントゲン検査)
  • CT 検査
  • MRI 検査 各項目について解説していきます。

打撲では視診や触診、聴診、打診、問診などの診察で身体状態と受傷時の状況を確認します。

単純X線検査は主に骨の状態を確認するために行われます。打撲では骨折や捻挫、脱臼などが疑われた場合に単 純X線検査を行います。

頭部打撲や眼部打撲、胸部打撲などで大事な組織の損傷が疑われる場合には CT 検査が行われます。例えば、頭 部打撲では頭蓋骨骨折や脳内出血が疑われる場合です。

打撲ではMRI検査が行われることは少ないですが、頭部打撲や眼部打撲などで重篤な症状が出ている場合や打 撲してから48時間以上症状が続く場合、症状が悪化している場合にはMRI検査を行います。

打撲の治療について

打撲の治療は以下の方法で行われます。

  • RICE 処置(応急処置)
  • 保存療法
  • 薬物療法

それぞれの項目について解説していきます。

RICE処置とはケガの直後に推奨される応急処置のことです。RICE処置とは「R=Rest(安静)」
「I=Ice(冷や す)」
「C=Compression(圧迫)」
「E=Elevation(挙上)」
の頭文字からなる名称で、打撲直後にも有効なため、覚えておくと便利です。打撲した部位によっては処置の方法が少し異なります。

【Rest(安静)】
打撲した部位に負担がかからないように安静にします。特に太ももや腕以外の打撲では状態悪化をさけるため、できるだけ患部を動かさないように保つことが重要です。
【Ice(冷やす)】
打撲した患部を氷や冷水で冷やして炎症を抑えます。冷やす時間の目安は15~20 分程度で、痛みが続く場合は少し時間を置いてから冷やすなど、調整しながら冷やし続けます。
【Compression(圧迫)】
内出血や腫れを最小限に抑えるために患部を圧迫します。可能なら伸縮性のある包帯などを使えるとベターです。血流が止まらない程度に圧迫しますが、目や頭などの圧迫はさけましょう。
【Elevation(挙上)】
患部の腫れを防ぐために心臓よりも高い位置に打撲した部位を挙げます。

骨折などのさまざまな合併症がない一般的な打撲では、組織の回復を促すためのマッサージや電気治療、超音波治療、鍼治療などの保存療法が行われます。

軽い打撲では、鎮痛消炎成分が含まれている外用鎮痛消炎薬などの市販薬で痛みや炎症を抑えることも可能です。

まとめ

日常生活で起きやすいケガである打撲。子供にも起きやすいケガの1つといわれます。

打撲した部位によって危険度が変わり、筋膜内血腫など見極めなければならない病態もあるため、軽い打撲でも医療機関を受診することが賢明かもしれません。

医師は病態に合わせた最良の治療を選択してくれますので、一緒に治療を頑張っていき ましょう。