膝の痛みは半月板損傷かも?半月板損傷を解説

半月板損傷ってどんな状態なんだろう?
半月板損傷って治るのかな? 半月板とは、膝の関節の中にあるC型をした板状の組織で、内側と外側にそれぞれ 一つずつあります。

半月板は、関節に加わる体重の負荷を分散させる役割と、関節の位置を安定させる働きを担 っています。この半月板に主にスポーツや急激な外力が加わった場合、または加齢による負担が積み重なるなどして亀裂が入ったり、ひどい場合には断裂した状態を半月板損傷と呼びます。

半月板損傷の病態をきちんと理解して、適切な治療を行えば痛みの軽減につながりま す。

今回の記事では、半月板損傷の病態と治療について解説をしていきます。

半月板損傷の病態について

膝という関節は他の関節と違い、骨と骨をつなぎとめる強靭な筋肉がありません。そのかわりに靭帯やその他の軟部組織や腱が安定性を高める役割を担っており、半月板はそれらの組織がグラグラしないように吸着させるよ うな役割があるのです。

膝関節は曲げたり伸ばしたりするだけではなく、捻れたり、膝のお皿が滑ったり転がっ たりといった動きも協調的に行い、滑らかに動きます。その動きを補助している半月板の負担は大変大きく、個 人差はありますが加齢や力学的な負担とともに傷つき、すり減っていきます。

スポーツや事故などによる膝へ の大きな衝撃や、長年の負荷の蓄積、加齢による経年変化などによって、半月板が傷ついたり、割れたり、ひび が入ったりしている状態が半月板損傷です。

半月板損傷の症状について

半月板を損傷すると強い痛みやその他の症状が発症します。ここでは半月板損傷の代表的な症状について説明します。

半月板損傷の症状のひとつとして、膝をスムーズに曲げたり伸ばしたりしにくくなることがあります。

膝を深く 曲げることができなくなったり、真っ直ぐに伸ばすことが難しかったり、動かそうとしたときに激痛を伴うこともあります。

また、半月板損傷を起こしている本人にはパソコンのマウスをクリックしたときのような音(クリ ック音)がしたり、ゴリッ、クリッとした感覚が走ることもあります。

重症の場合には、断裂した半月板の一部 が関節の隙間に入り込むことにより激痛を伴って関節が動かせなくなる「ロッキング」という症状が現れること もあります。

その他の半月板損傷の症状としては、繰り返す腫れや水が溜まる(腫脹や水腫)などが挙げられます。

これら 2 つの症状が当てはまる場合、半月板損傷が疑われますので早めに整形外科を受診するようにしましょう また、半月板損傷は治りにくいことも特徴です。というのも半月板の外側約 1/3 は血流がありますが、それ以外 の部分は血流がないため、組織の修復に必要な栄養素が運ばれにくくなっているのです。

そのため半月板損傷は 放置してしまうと治りにくいことがあります。治療せずに放置した場合でも、痛みなどの症状は徐々に軽減する 可能性はありますが、半月板そのものが修復することはほとんどありません。

それだけでなく半月板損傷を放置 したままでいると、膝の安定性や荷重に対する衝撃吸収力が低下し、時間経過と共に変形性膝関節症など別の膝 の病気に繋がることもあります。

半月板損傷が疑われる症状がある場合は、早めに受診し、医師に相談するようにしましょう。

半月板損傷の診断について

半月板損傷の診断は、以下の方法で行います。

  • 問診
  • 動作や可動域を見て検査
  • 画像検査

どうして痛くなったのか?
どういう時に痛いのか?

などを問診で聞き、

痛みの部位がどういう動作で痛いのか?
可動域に問題がないか?

などを見て、画像検査を行います。

医師による徒手的な検査では、患部を押して圧痛を見たり、膝を捻りながら曲げ伸ばしするマクマレーテストや アプレ―テスト、膝を最大限伸ばす過伸展テストなどのテストを行います。画像検査では主にMRIにより行われます。

半月板はレントゲンやCTには映らないためMRI検査が半月板損傷の診断には重要となります。また 半月板の損傷形態はさまざまで、縦断裂、横断裂、水平断裂などがあり、損傷部位により治癒過程が異なるため、MRI検査は治療方針を決定するためにも非常に有効な手段です。

小さな断裂や膝の裏側にある膝窩筋腱裂孔近くの外側の半月板損傷ではMRI検査でも診断が難しいことがあります。

そのため特殊な撮像法に加え、詳細な 問診や病歴(受傷機転)や、上述した医師による様々なテストを行うことにより総合的に判断します。

半月板損傷の治療について

半月板損傷の治療は以下のような方法があります。基本的には損傷が軽度の場 合は保存療法を選択します。

半月板損傷の治療というと「手術をしなくては治らない」と思う方も多いかもしれませんが、半月板損傷の患者全てに手術が必要という訳ではありません。

治療法は、大きく分けて保存療法と手術療法の 2 種類あり、半月板 損傷の症状が軽度の場合は保存療法を行います。

保存療法には、薬物療法、物理療法、装具療法、運動療法などがあり、患者の個々の半月板損傷の状態に合わせ、 これらの治療法を組み合わせて行います。

長い治療期間と自らの努力も必要な保存療法ですが、手術とは違い自らの半月板を温存できるため、将来変形性膝関節症になりにくいというメリットがあります。

また、半月板損傷の位置が外側ですと血流が豊富なため、保存療法での回復も期待できます。

薬物療法

外用薬や内服薬、座薬などで炎症や痛みを抑え、症状が落ち着いたらヒアルロン酸注射を行い、膝の潤滑を改善させます。

膝の痛みを抑え関節の動きをスムーズにすることにより、日常生活でかかる半月板への負荷を抑えます。

物理療法

機器によって膝を温めたり、電気的な刺激を利用してひざの痛みや炎症を抑える治療法で、主に温熱療法寒冷療法があります。

温熱療法では膝を温めることで血行を良くし、運動機能の活性化を図ります。寒冷療法は、アイシングなどで膝を冷やして痛みを和らげる方法です。

明らかな炎症がある場合や症状が出始めて間もない時は、寒冷療法を行うのが一般的です。

装具療法

日本人に多いO脚では、膝の内側に体重が偏って乗りやすいため、膝の内側の軟骨や半月板が損傷しやすい状 態になっています。

装具療法では膝や靴に装具、中敷きなどを装着し、体重のかかる場所を分散させることで半月板への負担の軽減、痛みの緩和が期待できます。

運動療法

痛みが酷くないようであれば、半月板をサポートする機能を強化しながら治療していく運動療法が効果的です。 膝や股関節周りの筋力強化や、硬くなった筋肉のストレッチ、膝に負担のかかりやすい姿勢や動作などを修正していきます。

がむしゃらにリハビリを行ったところで治療効果が高いわけではありませんので、医師や理学療法士、トレーナーなど専門家の指示を仰ぎながら行うことが大切です。

今ご紹介した保存療法は、長い治療期間と自らの努力も必要な治療方法ですが、手術とは違い自らの半月板を温 存できるため、将来変形性膝関節症になりにくいというメリットがあります。

ただし、半月板の損傷具合によっては治療効果が乏しい場合もあるため、医師と相談の上膝の状態をしっかり把握し、慎重に治療法を選択するこ とが重要です。

手術療法

上述したように膝が動かなくなるロッキングの症状や、何度も水がたまる症状があるなど、保存療法の効果が乏 しい場合には手術療法が選択されます。半月板損傷の手術には、断裂した半月板を取り除く半月板切除術と、損傷した部位を縫い合わせる半月板縫合術の 2 種類あり、病状によって手術法を選択します。

月板縫合術は、傷ついた半月板を縫合する手術になります。メリットとしては、可能な限り半月板を温存する 方法であるため、自らの半月板の機能を最大限維持できるということにあります。

この手術により変形性膝関節 症に進行するリスクを減らし、比較的激しいスポーツ競技にも復帰が可能です。

デメリットとしては、再び半月 板が断裂してしまうリスクがあるということです。再断裂した場合は、再度手術を行う必要があります。また手術時間は長くなることが多く、回復するまで長い期間を要することになります。 半月板切除術は、半月板の傷ついた部分を切除して取り除く手術です。

損傷部位が複雑で、縫合術が困難な場合に選択される手術法です。問題となる箇所そのものを取り除くため、回復するまでの期間が比較的短いとされて おり、早ければ術後1週間程度で歩行が可能になります。


術後は痛みが軽減するなど症状の改善が期待できま すが、半月板を切除したことによって膝の軟骨に負担がかかりやすく、変形性膝関節症に進行しやすい状態であ るとも言えます。よって、極力膝への負担を軽減させるために、手術後は運動療法などをしばらく継続する必要 があります。

手術療法は膝の痛みを早急に緩和させることができる治療法の1つです。保存療法を継続しても症状の回復が乏しい方にとっては、有効な治療法となるでしょう。その一方で膝軟骨への負担の増大により、将来的に変形性膝 関節症に進行する可能性が高くなるなどのリスクもあります。

また、入院する期間や長期に渡るリハビリなどか ら、社会復帰するまでの期間も長くならざるを得ないというデメリットもあります。

健康寿命という観点から考えても半月板の機能をできる限り温存する、ということが将来的に重要になってきます。特に若い方や膝の活動性が高い方は、医師としっかり相談した上、できるだけ負担の少ない治療法を選択するとよいでしょう。

まとめ

スポーツ選手や、事故などの急激な外力、加齢に伴う膝への負担の蓄積によっても発症しやすい半月板損傷。放っておけば治るだろうと思っていても、なかなか治らないケースも非常に多いです。

半月板損傷は治療に時間が掛かることも多いですが、適切な治療を進めることで痛みが軽減することが期待でき ます。

1 日でも早く痛みを軽減させたい場合には、医師と相談しながら治療をすることが最良の選択となります ので、一緒に頑張って治療をしていきましょう。

京橋イノルト整形外科 院長 守谷和樹

  • 久留米大学 医学部 卒業
  • 福岡新水巻病院 研修医
  • 福岡新水巻病院 整形外科
  • 東京品川病院 整形外科
  • 社会医療法人 美杉会 佐藤病院 整形外科
  • 市立ひらかた病院 整形外科 副部長
  • 日本整形外科学会専門医