足の痺れの病態と治療についての解説

足の痺れの病態と治療についての解説

足の痺れってどんな状態なんだろう?
足の痺れって治るのかな? 足の痺れは、足に力が入りにくくなる「運動麻痺」と、長時間正座をした後のようなジンジンする「感覚の異常」 の大きく 2 種類に分けられます。

どちらかのみが発症する場合と、運動麻痺と感覚異常が同時に起こる場合があ ります。運動麻痺は、脳から手足を動かす命令を伝える運動神経の経路に何かしらの理由で障害が起こり、手足 の筋肉に思い通りに力が入らなくなったり、筋力が衰えてきたことから発症します。

また感覚の異常は、手足の 感覚を脳に伝える神経の経路に障害が起こって出てきます。 運動神経や感覚神経が傷つく原因は様々であり、時には脳や脊髄が障害されて起こることもあります。障害が起 こった場所によって、足の痺れの原因が変わってきます。

そのため足の痺れの病態をきちんと理解して、適切な治療を行えば症状の軽減につながります。 今回の記事では、足の痺れの病態と治療について解説をしていきます。

足の痺れの原因について

足の痺れは前述した通り、様々な原因から発症します。原因によって、もちろん治療法も異なるため足の痺れの 原因は正確に診断する必要があります。


足の痺れは大きく分けて頭、脊椎、末梢神経、内科的疾患という 4 つの原因から起こることがほとんどですが、 さまざまな疾患が背景に絡んでいることも考えられます。

長期間治らない足の痺れ、徐々に悪化している足の痺れなどは、放置せず早めに医療機関を受診しましょう。

また、突然起こった足の痺れの場合は脳に障害を起こしている可能性もあるため、特に早く受診した方が良いで しょう。

頭に原因がある足の痺れ

脳血管障害

脳出血や脳梗塞が発生すると、脳皮質や末梢神経から感覚神経が通る部分が障害されます。すると、それらの機 能に影響が出て、障害されていない側の手足に痺れ(例えば右側の脳が障害された場合、左の手足)が起こりま す。

痺れに加え、強い痛みを感じる場合は脳の中の視床という部分が障害が障害されている可能性があります。

また、脳梗塞の前触れである一過性脳虚血発作という状態は短時間で痺れが治まり、症状が治ったと誤解される 場合もあるため、このような症状が起こった際も速やかに受診しましょう。

脳腫瘍

脳に腫瘍がある場合も、徐々に手足の痺れが出たり、感覚が鈍くなることがあります。

脊椎に原因がある足の痺れ

変形性脊椎症

年齢を重ねたことで脊椎の骨が変形し、骨棘(こつきょく)という骨のとげができた状態が変形性脊椎症です。 足の痺れ、痛み、脱力などの症状は、骨棘が脊髄や脊髄から枝分かれした神経根とよばれる神経を圧迫・刺激し ていることが原因となっている場合もあります。

後縦靱帯骨化症

後縦靭帯骨化症は、脊椎を支えている後縦靭帯が骨になってしまう病気です。その骨が脊髄の前にあるために脊 髄を圧迫し、足の痺れや運動麻痺を発症することがあります。

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎で椎間板が飛び出してしまうと、脊髄や神経根を圧迫します。よって、足の痺れや痛み、脱力などが現れま す。

脊柱管狭窄症

加齢や仕事による負担、腰の病気などにより、背骨が変形することで脊柱管が狭くなります。そのせいで、脊柱 管の中の神経が圧迫されて血流が悪くなり、腰や足の痛み、足の痺れなどの症状が起こりますが、圧迫される神 経の場所によって、症状の表れ方が異なります。

末梢神経に原因がある場合

梨状筋症候群

坐骨神経は、骨盤からでて足へ向かいますが、その際、骨盤の出口のところで、梨状筋という筋肉とのトンネル を通ります。この筋肉は通常柔らかいのですが、負担がかかって硬くなってしまうと、おしりに痛みを起こした り、側を走る坐骨神経をつぶしてしまい足の痺れなどがでてきます。このような病気を梨状筋症候群といいます。

腓骨神経障害

膝のすぐ下の外側には、「腓骨骨頭」という小さな骨のでっぱりがあります。腓骨神経は、このでっぱりを外側か ら下側へまわりこむように走ります。この神経はこのでっぱり部分で傷みやすく、腓骨神経障害を起こすことが あります。足を組んだり、きついストッキングを履くことや、長期間寝た状態などが続くと腓骨神経を傷つけ、 足の痺れが出ることがあります。

足根管症候群

足の裏に行く神経は、足首の内くるぶしの下を通って、足の裏から足の指にむかいます。この内くるぶしの部分 は、狭いトンネルに、この神経と動脈、静脈が一緒に走っているため、神経が傷みやすく足の痺れなどを引き起 こします。そのような病気を足根管症候群といいます。

内科的疾患が原因の足の痺れ

糖尿病性神経障害

糖尿病は小血管の動脈硬化を引き起こすため、神経に栄養を送っている栄養血管に血液が行かなくなり、神経障 害が出てきます。 その結果、細い末梢神経が侵されることで指先や足先がジンジンするような足の痺れを感じ、悪化すると痛みに 変わります。

ビタミン欠乏性神経障害

近年、極度の偏食をする人や、お酒しか飲まないような慢性アルコール過飲者などにビタミン欠乏による神経障 害が増加しています。 神経障害には末梢神経を侵される脚気(かっけ)と中枢神経が侵されるウェルニッケ・コルサコフ症候群があり、 足の痺れなどの症状を呈することがあります。

足の痺れの診断について

足の痺れの診断は、主に以下の方法で行います。 脳神経、運動神経、感覚神経(表在・深部感覚)、腱反射、協調運動などの神経学的診察法を用いたり、必要に応 じて血液検査、頭部・頚髄・腰髄の MRI 検査などを行います。

足の痺れの治療について

足の痺れの治療は、原因が様々であることから治療法が異なりますが、主に以下のような治療法があります。

脊椎の変形や末梢神経の障害などによる足の痺れへの治療

主に整形外科にて、首や腰を引っ張る機械などを用いる牽引療法と、神経の循環を良くする薬(ビタミン剤)の 服用、痛み止めの服用ブロック注射などにより足の痺れの改善を図ります。

また神経を圧迫している筋肉を緩めたり、負担のかかりにくい姿勢や動作を練習するリハビリテーションも効果 的です。 これらの治療で足の痺れの改善が期待できない場合や症状がひどい場合、手術も治療法の一つになってきます。

脳が原因の足の痺れへの治療

MRI 検査による脳画像から梗塞像や出血像、腫瘍などを検出し、緊急性に応じて脳卒中治療薬の点滴療法や手術 療法などが検討されます。また、早期にリハビリテーションを行うことも重要となります。

内科的疾患が原因の足の痺れへの治療

内科的な病気が原因の場合は内科的治療が必要になります。糖尿病患者では血糖値コントロールや禁酒、膠原病 のその治療などです。原因となる病気の治療を行っても、しびれや痛みが残る場合は、鎮痛剤や抗うつ剤、抗て んかん薬、末梢性神経障害性の薬剤などを用います。

ビタミン欠乏が原因の足の痺れへの治療

摂取不足の場合は、内服治療やサプリメントでビタミン B12 を補います。また、動物性食品(肉・魚・卵・牛乳 など)や豆・ナッツ類にはビタミン B12 が豊富に含まれているため、食事に特別な制限がなければこれらの食品 をバランスよく摂るようにしましょう。

胃や腸の手術によって吸収障害がある場合は、食事やサプリメントでビタミン B12 を摂取してもうまく吸収さ れないため、ビタミン B12 の注射が必要です。胃粘膜障害のある方は、胃炎の治療も行う必要があります。

まとめ

脳の問題や、脊髄・脊椎、末梢神経が圧迫されたり内科的疾患など、かなり様々な原因がある足の痺れ。

たかが 足の痺れ、放っておけば治るだろうと思っていてもなかなか治らなかったり、実はとても危険な疾患のサインで あるケースもまれではない足の痺れ。

足の痺れは、症状や原因により治療に時間が掛かることも多いですが、適切な治療を進めることで痺れが軽減す ることが期待できます。1 日でも早く足の痺れを軽減させたい場合には、医師と相談しながら治療をすることが 最良の選択となりますので、一緒に頑張って治療をしていきましょう。