アキレス腱断裂の病態と治療についての解説

アキレス腱断裂ってどんな病気だろう?
アキレス腱断裂って治るのかな?

アキレス腱の断裂はプロのスポーツ選手や、アマチュアでも本格的にスポーツをやっている人に多いという印象があるかもしれません。しかし、一般の中高年の方にもよくみられる代表的な運動障害の一つです。

アキレス腱とは、ふくらはぎにあるヒラメ筋と腓腹筋という筋肉と、かかとの骨をつなぐ腱のことを指します。アキレス腱は体の中でもっとも大きな腱で、 スポーツ外傷の中でも重症度が高く、競技復帰までに 6か月程度かかることもあります。

このため、適切に診断され、適切な治療をおこなう必要があります。今回の記事ではアキレス腱断裂の病態と治療について解説をしていきます。

アキレス腱炎の病態

アキレス腱断裂は、踏み込み・ダッシュ・ジャンプなどの動作でふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋) が急激に収縮した時や、着地動作などで急に筋肉が伸ばされたりした時に発生します。

おこりやすいスポーツの種目としてはバトミントンやバレーボール、サッカー、テニスといったものが挙げられます。

また、高齢の方では転んだり、ベッドなどから落ちたりしたときにもアキレス腱断裂をおこすことがあります。

アキレス腱は歩く、走る、跳ぶ、回転するなど、ちょっとした運動でも負荷がかかりやすい場所です。

そのアキレス腱に運動負荷がかかりすぎることによってくり返し腱に小さな傷が入り続けた時、加齢によりアキレス腱の柔軟性が失われてしまった時に起こるのではないかといわれています。

アキレス腱断裂の前兆として、 アキレス腱に腫れや炎症が起こることがあります。

筋肉痛や打撲だと思い、湿布薬などをはって済ませてしまうことがありますが、注意が必要です。

アキレス腱を断裂してしまうと、アキレス腱の部分に触れたときに陥没個所があり、痛みを感じます。うつ伏せで膝を直角に曲げた状態でふくらはぎを強くつまむと、正常では足関節は底屈(足先を反らす動き)をします。

アキレス腱を断裂すると、この底屈がみられなくなります。

主な症状について

受傷時には、「ふくらはぎをバットでたたかれた感じ」などの衝撃を感じることが多く、「破裂したような音がした」などアキレス腱が断裂した時の音を自覚することもあります。 受傷後は、アキレス腱の部位が痛みます。

断裂した側の足に体重をかけることができずに転倒したり、 しゃがみこんでしまったり、 階段の上り下りに支障がでたりします。また歩けなくても足首を動かすことができたり、しばらくすると歩けるようになったりすることがありますがそうした場合でもアキレス腱が切れてしまっている可能性があるため要注意です。

診断について

  • まず問診が行われます。
  • 自覚症状や受傷後の状態からアキレス腱断裂の疑いを考えます。
  • 次に理学所見について診ていきます。

アキレス腱の断裂部分を医師が触れて

  • 足の動きなどを確認したときに感覚があるかどうか
  • つま先立ちはできるかどうか
  • 徒手検査の結果はどうか

等アキレス腱断裂の可能性を判断していきます。

アキレス腱の部分にへこみや窪みがあるかを触ってみることが一番確かな診断です。

ただし、腫れと痛みが強い場合はそのへこんだ部分に触れることができないので注意が必要です。

さらに診断を確実にするためにはX線検査(単純X線検査・コンピュータX線撮影)・超音波検査・MRIといった画像検査がおこなわれます。

こうした画像検査から得られる結果は治療方針の決定にも役立ちます。加えて、似ている病態の可能性を探り見分けていくことも重要です。

似ている病態としてはおなじアキレス腱に生じる炎症である、アキレス腱炎・アキレス腱周囲炎、アキレス腱皮下滑液包炎など、その他には、肉離れや骨折や脱臼などがあるので慎重に診断をおこなっていきます。

治療について

アキレスを腱断裂した場合、主に保存療法と手術療法という選択肢があります。

治療中には画像検査などをおこない、アキレス腱の状態を把握しながら治療を進めていくことが重要です。

アキレス腱断裂時の保存療法は手術をせずにギプスや装具などを用い患部を固定させアキレス腱の回復を図るものです。

治療期間は、受傷の状態などによって異なります。

手術療法は多くの種類がありアキレス腱を直接繫ぎ合わせる端々縫合術(たんたんほうごうじゅつ)が一般的です。

手術後に装具を装着することで術後の足の状態の回復を向上をさせられるように治療を行っていきます。

それぞれに長所・短所があるので治療法は整形外科担当医とよく相談して決めることが大切です。

まとめ

同じアキレス腱の断裂でも若年層と中高年層では原因が変わってきます。若い人の場合は運動のしすぎや無理をすることで、断裂を起こすことが多いのに対し、中高年の場合にはアキレス腱の老化が主な原因とされています。

アキレス腱の断裂を予防するためには、日ごろからアキレス腱の保護がとても大切だといえます。

どの年代のかたも運動するまえにしっかりストレッチを行いふくらはぎの筋肉からアキレス腱にかけての柔軟性を高めることが重要です。中高年の方に関してはアキレス腱の老化による変性を遅らせるために少しずつ体を動かすことや日常的にほどよく運動することも大切です。

また運動時の靴にも注意が必要です。踵が遊んでいる靴は走ったりバランスをとったりするときにアキレス腱に余分な負荷がかかるので避けて下さい。