ボクサー骨折の病態と治療についての解説

ボクサー骨折はただの骨折じゃないの?
ボクサー骨折はどう治療するの?ボクシングなどの格闘技で受傷するイメージがあるボクサー骨折。ボクサー骨折は複雑な構造をしている手の骨折のため、初期治療がとても重要です。打撲などと勘違いして放置してしまうと、思いもよらない後遺症が残る場合もあります。

今回の記事ではボクサー骨折の病態と治療について解説していきます。

ボクサー骨折の病態について

ボクサー骨折とは、手のひらを構成する骨である中手骨の頸部(中手骨の先端で細い部分)を骨折するケガで、 こぶしを握った状態で人や物を殴打した時に起こる骨折です。

こぶしを握った状態で外から強い力が加わった時 に起こりますが、ボクサーと同じ動作で骨折する場合が多いため、ボクサー骨折と呼ばれています。

ボクサー骨 折を起こした場合、こぶしを握ると骨折した部分が変形している場合があり、骨折部分の骨がズレていることも あります。中手骨は5本あり、5本全てに骨折する可能性がありますが、小指と薬指につながる2本に最もボクサー骨折が起こりやすいです。

ボクサー骨折はボクサーや空手のようなアスリートだけでなく、ゲームセンターのパンチングマシンやケンカ、ハンドルを握ったまま正面衝突する交通事故、こぶしを突いた転落による事故などでも起こりやすいため、年代 関係なく気をつけて欲しいケガの1つといわれます。

ボクサー骨折の主な症状について

ボクサー骨折では以下のような症状が出るとされています。

  • 腫れ
  • 内出血
  • 指を動かすと激痛が起こる
  • 手指が動かせない
  • 圧痛(押した時に痛む)
  • 骨折部分の変形

ボクサー骨折が起こると、こぶしから手の甲の腫れや痛み、手指の運動障害などが急激に出現します。

腫れが指 先にまで広がる場合もあり、折れた骨がズレてしまったら患部に変形も起こります。筋肉などの影響で骨折部分がねじれてしまうこともあり、そのねじれが残ったまま骨が癒合(骨がくっつくこと)すると後述する後遺症が残ります。

ボクサー骨折の後遺症

ボクサー骨折の後遺症には以下が挙げられます。

  • オーバーラッピングフィンガー(指を上手く曲げられない)
  • 変形性関節症
  • 手指の機能障害

ボクサー骨折はぶつけた直後には大きな変形を伴わないため、ただの打撲だと思って放置してしまうケースも多 いですが、関節付近の骨折であるため指を曲げる動作に支障をきたすようになってきます。

骨が癒合していく段 階で適切な処置や治療がされないと、骨がねじれたまま癒合してしまい、「握力の低下で物がつかみにくい」「手 関節や手指部に痛みが起こりやすくなる」などの症状が出ます。

ボクサー骨折の骨折部が変形したまま治癒する と、手術をしない限りは治らないので注意しましょう。

ボクサー骨折の診断について

ボクサー骨折の診断は、以下の方法で行われます。

  • 単純X線検査(レントゲン検査)
  • CT検査
  • MRI検査

各項目について解説していきます。

単純X線検査では骨折場所や骨のズレなどが確認できます。

いろんな角度から撮影を行い、骨のねじれやボクサ ー骨折の他に合併症などがないかも確認します。

ボクサー治療の経過観察として、骨が正しくつながっているか の確認にも単純 X 線検査が行われます。

CT検査では骨を細かい幅に分割した画像を造り出す事で、単純 X 線検査ではわからない部分を補うことがで き、3D画像構築処理も可能なため骨を立体的に全方向から診ることもできます。

そのため、ボクサー骨折で骨の変形がひどい場合や粉砕骨折の疑いがある場合、他の骨折も併発している場合などは CT検査が行われることもあります。

MRI 検査は、単純 X 線検査ではわかりにくい骨のヒビや繰り返しの衝撃が引き起こす疲労骨折などを診断する ことができます。

ボクサー骨折の症状があるにも関わらず、単純X線検査では診断できない場合など必要に応じて使われます。

ボクサー骨折の治療は以下の方法で行われます。

  • 整復、固定
  • 保存療法
  • 手術療法

それぞれの項目について解説していきます。

整復とは、ズレてしまった骨の位置を正常に戻すことです。完全骨折などでは折れた骨が筋肉などの影響で動い てしまい、骨折面同士が正しい位置からズレることがあります。

特に手は精密な動きが必要なため神経や筋肉が 複雑に入り組んでおり、ズレたままの骨癒合は日常生活に支障が出ることもあるので大変危険です。

ボクサー骨折では、変形や骨のズレが小さい時は医師などが整復を行い、そのあとにギブス固定処置がされます。

親指を除いた 4 本の指は腱が同じであるため、骨折した指だけを固定するだけでは不十分です。そのため、ボクサー骨折でのギプス固定は人差し指~小指まで 4 本の関節を固定します。

ボクサー骨折では、骨のズレが見られない、または少ない場合は保存療法が選択されます。親指以外の指4本を固定して4~6週間安静に保ち、医療機関などでのリハビリで軽い指の運動を行います。

ボクサー骨折で正しく整復するのが難しい場合などは手術療法が行われます。手術療法ではスクリューやプレート、鋼線などを使って骨折部分を直接整復する内固定手術が行われます。

ちなみに、内固定手術を行った場合は ギブス固定を行いません。

まとめ

日常生活の中で誰にでも起こる可能性があるボクサー骨折。ゲームセンターのパンチングマシンなど、遊びの最中に受傷することもあるため気をつけたいところです。

ボクサー骨折の治療過程で重要なのは、骨が癒合するまで焦らず待つことです。医師は状況に合わせた最良の治療を選択してくれますので、一緒に治療を頑張っていきましょう。