足底腱膜炎の病態と治療についての解説

足底腱膜炎の病態と治療についての解説

足底腱膜炎とはどんな状態なの?
足底腱膜炎は治るの? スポーツ選手に多い印象のある足底腱膜炎。一般の方も含めて日本人の約1割がかかっているともいわれる身近 な疾患です。

足底のアーチ構造が足底腱膜炎に関係していますが、原因はアーチの有無だけでもなく、1度発症 すると治療に時間がかかる場合もあるため厄介な疾患でもあります。

今回の記事では足底腱膜炎の病態と治療について解説していきます。

足底腱膜炎の病態について

足底腱膜炎とは「足底筋膜炎」とも呼ばれ、足の底にある足底腱膜といわれる部分が炎症を起こして痛みなどの 症状が出る疾患です。

足底腱膜は足の底にある筋肉を包んでいる筋膜のことで、踵(かかと)から足の指の付け 根まで扇のような形で広範囲に広がっています。

人間の足底は前後と横にアーチ状の構造になっており、歩行や ジャンプなどの動作時に衝撃を吸収するクッションの役割をしていますが、土踏まず部分がない偏平足(へんぺ いそく)や加齢によって足底腱膜が固まるなどでクッション機能が低下すると足底腱膜に過剰な伸張ストレスが かかりやすくなります。

そうなると繰り返しの衝撃などに耐えられなくなり足底腱膜組織に細かい断裂がおき炎 症を起こしてしまいます。

足底腱膜炎の原因について

足底腱膜炎の原因は以下のとおりです。

  • 偏平足やハイアーチ
  • 外反母趾
  • 加齢などによる足底腱膜組織の柔軟性低下 ・足裏の疲労蓄積や過度な負担(使いすぎなど)
  • ランニングやジャンプ、着地動作など繰り返し足底に衝撃が加わるスポーツをしている
  • ふくらはぎやアキレス腱の柔軟性不足(足首の関節が硬い)・運動不足
  • 靴が合っていない(履き方やサイズ)
  • 体重過多や肥満

足底腱膜炎は足底腱膜にかかる負荷が許容量を超えてしまうため起こる疾患です。偏平足や外反母趾などは足底 アーチが崩れた足部構造になっています。

足部(足首から下部分)は 26 個の骨で構成されており、特に足底ア ーチの崩れは足底腱膜に過度な負担を与えるため足底腱膜炎の大きなリスクです。足底腱膜炎はスポーツを行う 人に多いといわれており、特に硬い地面で行うスポーツは地面から返ってくる衝撃も大きくなるためリスクが高 くなります。

アスファルトで走り込みをするマラソン、ジャンプ動作からの着地が多いバレーボールやバスケッ トボールなどをされている人も、運動後のストレッチや適時休憩をとるなどケアが大事です。

足底腱膜炎の好発部位について

足底腱膜炎が起きやすい部位は以下のとおりです。

  • 踵骨(かかとの骨)の足底筋膜付着部
  • 土踏まずのあたり

足底腱膜炎が最も起きやすいのは、かかとの骨に足底腱膜がくっついている「踵骨の足底筋膜付着部」です。歩 行などで足底の筋肉が使われる際には、足指の方向へ足底腱膜が伸ばされる動きになるため、踵骨の足底筋膜付 着部に多くの伸張ストレスがかかるためです。

足底腱膜炎の主な症状について

足底腱膜炎では以下のような症状が出るとされています。

  • 踵(かかと)の痛み
  • 足裏の痛み
  • 足裏の内側に沿ったラインの痛み
  • 足裏の違和感(しびれ、熱感、つっぱり感など)
  • つま先立ちや階段を上る時に痛みが強くなる
  • 歩行やランニング時に足裏に痛みが出る
  • 動き始めに痛みが起きる(朝の起床時など)
  • 動き始めは痛むが、動いているうちに痛みが軽減してくる
  • 立っているだけで痛みが出る(重症)
  • 何もしていなくても痛みが出る(重症)

足底腱膜炎は足底腱膜のどの部分にも痛みが起こる可能性がありますが、かかと部分の痛みが最も多いといわれ ています。踵骨の前側や内側、踵骨後ろの先端部分などいくつか部分に痛みが出ることが足底腱膜炎の特徴です。

踵骨の真下部分は「踵部脂肪体」呼ばれる脂肪組織がありますが、足底腱付着部の炎症が踵部脂肪体に波及する と、かかとに体重をかけた時に痛みが起こります。

足底腱膜炎が重症になると歩くことさえ困難になるケースも あるため注意しましょう。

足底腱膜炎の診断について

足底腱膜炎の診断は、以下の方法で行われます。

  • 診察(疼痛誘発検査や問診)
  • 単純X線検査(レントゲン検査)
  • MRI検査
  • 超音波検査(エコー検査)
  • 足底圧検査

足底腱膜炎の心配がある方は整形外科を受診しましょう。 各項目について解説していきます。

診察(疼痛誘発検査や問診)

足底腱膜の圧痛(押したら痛みがある)や、腫れ、痛む場所などを診察によって確認します。

単純X線検査

単純 X 線検査は主に骨の状態を診る検査です。足底腱膜炎では他の疾患との鑑別や、かかと部分に「骨棘」と呼 ばれるトゲができていないかを確認するために使われます。

MRI検査

足底腱膜炎では炎症の程度や範囲、腱の損傷具合などを確認する精密検査として MRI 検査が使用されます。

超音波検査

超音波検査とは人間には聴こえない高い周波数の音波を体内の臓器などにあてて、跳ね返ってきた情報を画像に 変換して映し出す検査です。足底腱膜付着部周囲などの腫れや炎症の有無などが確認できます。

足底圧検査

特殊な機械を使い、足裏の圧力のかかり具合を検査します。踵に負担がかかりやすい立ち方や歩き方をしていな いかなど判断しますが、機械を導入している医療機関でしか行えません。

足底腱膜炎の治療について

足底腱膜炎の治療は以下の方法で行われます。

  • 保存療法
  • 薬物療法
  • 体外衝撃波治療
  • 手術療法

それぞれの項目について解説していきます。

保存療法

足底腱膜炎は足底腱膜への負担を減らすことが大事なため、足底アーチを維持するインソールやサポーターの使 用、一定期間の運動休止や運動量の調整、柔軟性回復のために足底腱膜やふくらはぎのストレッチ、マッサージ、 電気療法や超音波治療などの物理療法などが行われます。

薬物療法

足底腱膜炎による痛みの緩和を目的に薬物療法が行われます。非ステロイド系抗炎症薬の内服薬や外用薬の処方、 痛みがある部分へのステロイド注射などです。

体外衝撃波治療

体外衝撃波疼痛治療とは、痛む部位に衝撃波を照射することで痛みを誘発している自由神経終末を破壊するため、 痛みを取り除く効果が得られる治療法です。組織修復作用もあるため、血管新生や腱修復反応を促進する効果が あります。

体外衝撃波治療は日本では足底腱膜炎のみが保険適用になっており、痛みが半年以上続く「難治性足 底腱膜炎」患者さんに用いられることが多いです。

手術療法

保存療法や薬物療法などでも足底腱膜炎が改善しない場合は手術療法が検討されます。内視鏡で足底腱膜の損傷 部位に切り込みを入れる「足底腱膜切離術」や、ふくらはぎの筋肉とアキレス腱を伸ばす「筋腱延長手術」など が足底腱膜炎の状態に応じて選択されます。

まとめ

足の酷使だけでなく加齢にともない発症リスクも高まる足底腱膜炎。足裏を含めた足のケアが重要です。足底腱 膜炎は足底腱膜が負荷に耐えられなくなると発症しやすくなるため、足底腱膜への負担をいかに抑えるかがカギ ともいえます。医師は病態に合わせた最適で最良の治療を選択してくれますので、一緒に治療を頑張っていきま しょう。