骨盤骨折のリハビリ内容を解説
骨盤を骨折してしまった場合のリハビリって、何をやるの?
そもそも、骨盤を骨折してもリハビリをやるの?
骨盤骨折は、命にも関わることのある大怪我なので、このようにリハビリを行うイメージを持つことができない人も多いことでしょう。
しかし現場では、骨盤骨折の方にも適切にリハビリの介入は行われています。
今回の記事では、骨盤骨折のリハビリについて解説していきます。
骨盤骨折のリハビリ
骨盤骨折のリハビリは、いくつかの段階に分けて考えることができます。
これら4段階に分けて解説していきます。
身状態の管理
骨盤は臓器を支えるための強固な骨なため、骨盤が骨折するためには、かなり強い衝撃が必要になります。強い衝撃の例としては、高所からの転落や激しい交通事故などです。
このような衝撃が体に加わったと考えると、骨が折れただけではなく、筋肉や血管などの損傷もあると考えられます。
また、骨盤は血流が豊富なため、骨折をしてしまうと大量に出血する可能性があり、出血により命の危険が考えられることもあります。
そのため、まずは全身状態が落ち着き、命が助かっている状態になっているかどうか、確認する必要があります。
特に出血には注意が必要なため、血液データや血圧を見ながら、全身に血が足りている状態なのかを把握しながら介入していきます。
まだ怪我をして間もない頃は、ベッド上で寝たきりになっていることが多く、寝返りが制限されていたり、痛みで動けない状態になっていたりすることが考えられます。
リハビリの内容としては、まずは安楽な姿勢になれるようにクッションを用いて寝ている姿勢を調整したり、痛みが出ないようにポジションを整えたりします。また、動かせる範囲内で関節を動かし、血流を改善したり、関節が固くならないようにしたりしていきます。
骨が癒合するまでの時期
全身状態が落ち着き、命の危険を脱したら、まずは一安心ですよね。しかし、まだ安心できないのは、骨がくっついていない状態だということです。そのため、病棟での生活において骨がずれるようなストレスを与えてはいけません。だからといって、ずっと寝たきりになってしまうと、体力が低下してしまい、様々な障害が出てきます。骨が癒合するまで寝たきりにはさせておかないようにするのがリハビリの役割です。
医師に状態を確認しつつ、どこまでならリハビリを行って良いのか指示をもらいながら、少しずつ車椅子に乗ることにチャレンジしていきます。
折れている場所によっては、足をつくことができないことが考えられます。レントゲンも確認しながら、折れている場所に対してどのようなストレスがかかるのか予想をしながら介入していきます。
このあたりから、徐々に筋力強化を始めていき、体力、筋力が落ちないようにしていきます。
研究によると、早期から筋力強化をしている群の方が、筋力が強い状態が維持されたとされているため、痛みなどを考慮しつつも、早めに筋力強化を始めた方が良い結果になることがわかります。
患者さんの骨折の状態によっては、起こすことによるリスクが高く、骨が癒合するまで安静の指示が出ることもあります。その時には、骨をずらすストレスをかけないように慎重にできることを行なっていきます。
骨が癒合してからの時期
骨が癒合してからは、足にも荷重をかけ始めます。骨の癒合の状態や骨折の程度によっては、体重の1/3や1/2など、部分的に荷重を開始することもあります。部分的に体重をかけていく場合には、定期的にレントゲンなどで骨の癒合状態を確認しつつ、かけていく体重を多くしていきます。
この頃には、病棟内で歩くことが可能になっていることが考えられますが、安静による筋力の低下や、痛みなどが原因で、スムーズに歩行ができないことも考えられます。
特に骨盤には、股関節を動かす筋肉が多く付いているため、骨盤を骨折することにより、筋肉を使いにくくなることが考えられます。特に骨盤を構成している腸骨や仙骨には、歩行や立っている姿勢で重要になる中殿筋や大臀筋と呼ばれる大きな筋肉がついていますので、これらの筋肉が働きづらい状態になると、歩くことも不安定になってしまいます。
このような場合には、落ちてしまった筋力をしっかりと改善させ、正常に歩けるように時間をかけてアプローチを行ないます。
退院後
退院後は、外来リハビリなどでフォローしていきます。仕事や趣味活動に復帰できるように、課題を一つずつクリアしていきます。
骨盤の骨折に伴って、骨盤の形状が変わってしまったり、神経を傷つけて痺れなどが出てしまったりしている場合は、時間をかけてリハビリを行なっていく必要があります。
担当のスタッフと相談をしながら、最良の選択を行なっていきましょう。
まとめ
今回の記事では、骨盤骨折のリハビリ内容について解説してきました。
骨盤骨折は、大量の出血をする可能性が高く、命の危険がある骨折です。しかし、命の危険を脱したら、すぐにリハビリは開始になります。もちろんリスクを考えながら、できる範囲のことを行なっていきますが、できる限り寝たきりを予防していくことが重要です。
骨折部へのストレスや痛みを考慮しながら、できる範囲で関節を動かす練習や筋力強化などを行なっていき、動けるような状態になった時にスムーズに歩行などができるようにしていきます。
専門知識を持ったセラピストが対応しますので、安心してリハビリを受けていただけると幸いです。
・冨士佳弘, and 奥田真規. “不安定型骨盤骨折保存治療症例に対するリハビリテーションについての報告.” 理学療法学 Supplement Vol. 37 Suppl. No. 2 (第 45 回日本理学療法学術大会抄録集). 公益社団法人 日本理学療法士協会, 2010.
参考書類
・黒川陽子, and 富永俊克. “10 カ月間の床上安静の後より歩行を獲得するまでに至った骨盤輪骨折のリハビリテーションの実際.” The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 46.3 (2009): 202-206.
参考書類