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骨粗鬆症の運動療法はどんなことをするの?効果的な運動について解説
骨粗鬆症に運動が良いとされているけど、どんな運動をしたら良いの?
運動療法って、特別なことをやらなければいけないの?
このように、「運動療法」という言葉を聞くと、難しいイメージがあると思います。しかし、骨粗鬆症の改善のための要点を抑えた運動は、それほど難しいものではありません。
今回の記事では、骨粗鬆症の運動療法について解説していきます。
できる範囲での運動を行っていきましょう。
骨粗鬆症改善のために必要な運動
骨粗鬆症改善のためには、骨に対して刺激が必要になります。特に重力の負荷がかかることにより、骨に対して弱い電気刺激が入り、カルシウムなどが吸着されるために骨が強くなっていくとされています。
そのため、ウォーキングやジョギングなどが、骨を強くするための運動としては有効です。さらに効果を高めるために、運動を行う時間帯を日中にすると良いでしょう。適度に日光にあたることにより、体内でビタミンDが生成されます。ビタミンDはカルシウムの吸収を促してくれる作用があるため、重要な栄養素とされています。
一方で、上半身の骨を強くするためには、筋力強化が有効とされています。筋肉を強く収縮させることにより、筋肉の付着部である骨が引っ張られ、刺激が加わるからです。腕立て伏せであれば、腕に対して重力の刺激を入れることも可能です。
高齢者の場合は、転倒すると骨折につながりやすいため、転倒を予防する目的としても運動は重要になります。
ここからは、骨粗鬆症の方におすすめの運動を、種目別に解説していきます。
背中を伸ばすストレッチ
まずは、ストレッチから解説していきます。
骨粗鬆症の方は、背骨の骨折をしやすく、その結果猫背になりやすい傾向にあります。そこで、背中を伸ばすストレッチを解説します。
- うつ伏せで寝ていただき、肘で体を支える姿勢になります。
- そこから天井を見上げ、背中がそり返る程度まで体を反らせていきます。
- 余裕がある人は、肘を伸ばして、さらに体をそり返らせます。
- 体が反った状態を15秒程度維持して、ゆっくりと戻ります。
- これらの流れを1日4セット程度行います。
注意点
痛みに注意しながら行ってください。痛みが出ない範囲で行うことが大切です。
体を反らせる時には、できるだけ腰には力を入れず、腕の力で反らすようにしてください。
肘を伸ばして行う時も同様です。
踵上げ
骨密度の維持効果がある運動として推奨されるものの一つに、踵上げがあります。
壁や椅子を持って立ち、踵上げを行います。
回数は50回程度が目安となります。一気に行うことはむずかしいため、10回刻みで5セットなど、無理なく行えるように負荷量は調整しましょう。
注意点
注意点の一つ目は、できるだけ膝を曲げないようにすることです。ふくらはぎには2種類の筋肉が存在します。膝を曲げてしまうと、1種類の筋肉しか働かないため、膝を伸ばして行うようにしましょう。
注意点の2つ目は、腰を反らないようにすることです。
頑張って踵上げを行う人に多いのが、踵上げの時にお腹を突き出すように腰が反ってしまう姿勢になることです。
腰を反るのではなく、真っ直ぐ上に伸び上がるようにしましょう。
片足立ち
片足立ちは、転倒を予防する効果があると言われています。
やり方は簡単で、片足ずつ1分間片足立ちを実施するだけです。それを朝、昼、夜行います。
1分間の方足立ちで得られる足の付け根に対する負荷量は、53分間の歩行で得られる負荷量と同等と推測されています。
そのため、効率よく骨に負荷をかけていくことが可能です。
注意点
注意点の一つ目は、転倒に注意することです。
骨粗鬆症の方は、転倒で骨折しやすい状態になっています。そのため、片足立ちの練習を行う時には、壁や机など、寄りかかれるしっかりとしたものの近くで行うようにしてください。ふらつきが強い時には無理をしないで、15秒を4セットなど、分割して行うと良いでしょう。
注意点の2つ目は、できるだけ体を傾けないようにすることです。
体を傾けてしまうと、バランスは取ることは楽になりますが、筋力をあまり使わない姿勢になりやすいです。そのため、できるだけ体を傾けないようにして、片足立ちを行うことが筋力を強化していく上では望ましいと考えられます。
ダンスや太極拳などの趣味活動
特定の運動だけではなく、元々趣味で社交ダンスや太極拳などを行う習慣がある人は、ぜひそれを継続してください。
社交ダンスも運動負荷は強いですし、重力を受ける刺激も十分あります。
また、太極拳は動作がゆっくりで、骨だけではなく筋肉への負荷量も多いです。動作がゆっくりなため、体を痛めにくいことも特徴です。
太極拳を対象にした研究では、太極拳を行うことにより、足の付け根の骨密度が改善したとの報告があります。
足や腰が痛くて運動が大変な場合
もしも、足や腰が痛くて運動ができない場合は、痛い部分を治すことが優先される場合もあります。
痛みが強い状態で無理をしてしまうと、痛みがさらに悪化し、運動すら困難になってしまうこともあるかもしれません。まずは医師と相談しつつ、運動を行って良いか、運動を行うとしたらどの程度行うと良いのかを明確にした上で、運動に取り組みましょう。
まとめ
今回の記事では、骨粗鬆症の運動療法について解説してきました。
運動に必要な要素は、骨に対する刺激です。今回ご紹介した運動は、自宅内でもできる運動が多いので、テレビを見ながらや、家事の合間などに行うと良いですね。
できれば、日中に30分程度の散歩に出かけると、日光浴によりビタミンDも生成されるため、腸からカルシウムが吸収されやすくなり一石二鳥です。
日頃から少しずつ運動を行なっていき、骨を強くしていきましょう。
・厚生労働省eヘルスネット:骨粗鬆症予防のための運動-骨に刺激が加わる運動を
・木村慎二. “骨粗鬆症のリハビリテーション.” The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 53.12 (2016): 908-913.