変形性膝関節症からくる膝の痛みをわかりやすく解説!

中年以降に多く聞かれる健康の悩みで「膝の痛み」があります。今回は膝関節に痛みを発症する変形性膝関節症について説明します。変形性膝関節症の診断の際は、どの程度症状が進行しているのか把握し、そのステージ分類ごとに適切な治療を行うことになります。

変形性膝関節症とは

膝の関節は4つの骨(大腿骨、脛骨、腓骨、膝蓋骨)と半月板や靭帯などから構成されています。関節の表面は関節軟骨で覆われていますが、変形性膝関節症では関節軟骨がすり減り、関節の内側を覆う膜(滑膜)に炎症が生じて症状が現れます。

変形性膝関節症とは、関節のクッションである軟骨が、加齢や肥満、筋肉量の低下などですり減って痛みが生じる病気です。軟骨がすり減った分、膝関節の骨と骨のすき間が狭くなり、進行していくと骨のへりにトゲのような突起物(骨棘)ができたり、骨や関節が変形したりします。

また、関節を包む関節包(かんせつほう)と呼ばれる繊維膜の内側に炎症が起こるため、黄色味がかった粘り気のある液体が分泌され、いわゆる「膝に水がたまった」状態になり、外からは腫れているように見えます。

炎症や骨の変形により痛みが発生し、臨床症状としては「Starting pain(スターティングペイン)」と呼ばれる、立ち上がり時や歩き始めなど、動作開始時に膝に痛みを感じるのが特長です。

男女比は1:4で女性に多くみられ、高齢者になるほど罹患率は高くなります。主な症状は膝の痛みと水がたまることです。初期では立ち上がり、歩きはじめなど動作の開始時のみに膝に痛みがあり、休めば痛みがとれますが、徐々に正座や階段の昇降が困難となり(中期)、末期になると、安静時にも痛みがとれず、変形が目立ち、膝が完全に伸びず、歩行が困難になります。

変形性膝関節症の進行段階

変形性膝関節症の進行度は、X線写真でみられるとげ状の骨(骨棘)、関節のすきまが狭くなること(関節裂隙狭小化)、軟骨の下にある骨が硬くなること(軟骨下骨硬化)などの所見にもとづいて進行段階が判断されます。

変形性膝関節症で進行段階を診断することは大変重要で、進行段階によって治療方法が変わってきます。分類法はいくつかありますが、国際的にはKL分類(Kellegren-Lawrence分類)がよく用いられています。KL分類では、膝関節に変形が全くない状態をグレード0とし、変形性膝関節症の進行度をグレード1~4の4段階(0を含めると5段階)に分類しています。一般的に、グレード2以上の場合に変形性膝関節症と診断されます。

変形性膝関節症の進行度分類「KL分類」※1)

KL分類では、グレード0が正常、グレード2以上が変形性膝関節症と診断されます。最重度はグレード4です。

グレード0

大腿骨(だいたいこつ:太ももの骨)と脛骨(けいこつ:すねの骨)の間の関節の隙間が十分にあり、関節の変形もない正常な状態。

グレード1

骨棘の可能性があり、関節裂隙狭小化(かんせつれつげききょうしょうか:大腿骨と脛骨のすきまが狭くなってしまう現象)の疑いがある状態。

グレード2

正常な関節と比較して、25%以下の関節裂隙狭小化がみられます。グレード1と同様、わずかに骨棘が確認できます。変形性膝関節症の初期段階といわれ、一般的にグレード2以上の場合に変形性膝関節症と診断されます。立ち上がりや正座、階段の昇降の際に、一時的な膝の痛みやこわばりを感じるなどの症状が見られるようになります。

グレード3

正常な関節と比較して、50~75%程度の関節裂隙狭小化や複数の骨棘、軟骨下骨硬化がみられるようになります。この段階になると、階段の昇降時などの膝の痛みが強くなったり、膝の曲げ伸ばしがスムーズにできなくなり、正座をすることが難しくなることがあります。人によっては膝に水がたまり、腫れてくることもあります。

グレード4

正常な関節と比較して、75%以上の関節裂隙狭小化がみられ、関節裂隙が消失することもあります。さらに大きな骨棘や明確な骨端部の変形、骨硬化もみられるようになります。この頃になると、じっとしていても常に膝が痛むようになったり、膝が完全に伸ばすことができなくなり、日常生活に支障をきたすようになってきます。

ただし、上記でご紹介した変形性膝関節症のステージ分類に基づいた進行と、痛みを始めとした症状の強さは一致しない場合もあります。これは痛みの感じ方には個人差が大きいためです。ご自身の膝の状態を正しく把握し、適切に治療するためにも、膝の痛みや違和感、腫れなどがある方は身近な整形外科を受診するようにしましょう。

※1:Kellgren JH, Lawrence JS (1957). Radiological Assessment of Osteo-Arthrosis. Ann Rheum Dis, 16(4), 494-502.