五十肩にロキソニンが効かないのはなぜ?理由を解説!

四十肩・五十肩でお悩みの肩で「ロキソニンを飲んでも効かないのはなぜですか?」と聞かれることがあります。

痛み止めとして一般的にも有名なロキソニンですが、 四十肩・五十肩に効かない場合があるのはなぜでしょうか。四十肩・五十肩の症状や治療法を中心に、ロキソニンが効かない場合の対処法についてお伝えしていきます。

四十肩・五十肩の症状

四十肩・五十肩は加齢によるものが多く、特徴として肩をあげたり水平に保つのが難しく、肩を動かすと痛みがあります。

そのため、洗濯物が干しづらくなったり、肩よりも上のものが取りづらくなったり、背中のファスナーがあげられないなどの症状が現れます。

よく肩こりと混同されてしまいがちですが、肩こりは筋肉の緊張などから起こるもので、四十肩、五十肩とは病態が異なります。

四十肩・五十肩の主な症状は以下になります。

  • 腕をあげると肩が痛い
  • 痛くて腕をあげられない・肩を回せない
  • 寝ている時の肩の痛みがある、痛みで目が覚める
  • 起床時の肩の痛み
  • 肩の痛みで反対側の肩を触れない
  • 肩の痛みで背中、へそを触れない
  • 洗髪や洗顔といった動作が辛い
  • 服を着替える動作が辛い


狭い意味での五十肩・四十肩は「肩関節包炎」という病名ですが、その炎症や癒着が起こる関節包は肩を全域に取り囲んでいます。

つまり、関節包は肩の前にも下にも後ろにも上にもあります。なので、肩を上に上げようとしても、腕を背中に回そうとしても肩を開こうとしてもあらゆる方向への動きで痛みが出たり固くて動かせなかったりします。

ただ、関節包の中でも特に強い症状が初期から出やすいのが、肩の前方です。肩を動かした時に痛みが出たり腕を後方に回せないなかなか肩があげられないなどの症状がある場合はできるだけ早く受診する必要があります。

四十肩・五十肩と肩こりとの症状の違い

肩こりは「筋肉疲労」、四十肩や五十肩は「炎症」の状態です。一般的な肩こりは筋肉の緊張からくる血液循環の悪化が原因で習慣化した姿勢の悪さや運動不足、ストレスにより筋肉疲労がおこり張りや鈍い痛みを引き起こします。

肩こりの痛みは一般的に「鈍痛」と呼ばれるもので、「肩を動かしていないとき」にも「鈍い・重い」感じの痛みがありますが、四十肩や五十肩は「肩を動かしたとき」に「鋭い痛み」があるのが特徴です。

また、肩こりは寝ている時には気になりにくいですが、五十肩・四十肩は寝ている時にも痛みがあることが多いです。

四十肩、五十肩は加齢などにより、肩関節をとりまく関節包や腱板に炎症が起こる事で痛みが生じると言われています。

そのため年齢の若い方より、中年以降に発症する事が多いです。肩こりと四十肩、五十肩では対処の仕方が異なる場合があります。

誤った判断で痛みを悪化させることのないよう、正しい診断の元、適切な対処をすることが大切です。

四十肩・五十肩の原因

四十肩・五十肩の発生原因は、未だはっきりと解明されていませんが、加齢に伴い肩の関節や筋肉、肩周辺組織に固くなったり縮んだりなどの変化が起こることで、炎症や痛みを引き起こすためと考えられています。

また、これらの直接的要因に加えて、生活習慣やストレス、ホルモンバランスの変化といった間接的要因が重なることも発症のきっかけになるといわれています。

四十肩・五十肩が発症しやすい人と条件

四十肩・五十肩は、40代以降の人に発症しやすく、男女差はありません。また、左右の発生率についても違いがなく、利き腕だから発症しやすいということもありません。

ただし、若い時に野球をはじめとしたスポーツや仕事で肩を酷使し、肩を痛めたことがある人は発症しやすい傾向にあります。

普段から猫背になりやすい人も注意が必要です。猫背の人は重心が前のめりになり、体の歪みが生じやすいため、四十肩・五十肩のリスクが高まります。普段から正しい姿勢を意識しましょう。

また、不規則な生活習慣、寝不足、偏った食事、過度なストレスによる肩の血行不良なども、四十肩・五十肩を引き起こすといわれていますので、生活習慣の見直しが大切です。

四十肩・五十肩の治療法

治療法は、大きく分けて保存療法とリハビリテーション、手術療法があります。

保存療法

保存療法には薬物療法、関節内注射があります。

薬物療法

薬物療法では痛み止めの飲み薬や貼り薬が処方されます。一般的にはNSAIDs(:エヌセイズ)という非ステロイド性抗炎症薬を使用します。(商品名:ロキソニン・セレコックス)

体内では炎症や痛みなどを引き起こすプロスタグランジン(PG)という物質があり、シクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素などにより生成されます。

NSAIDsはCOXを阻害しPG生成を抑えることで、炎症や痛みなどを抑える作用があります。

関節内注射

薬物療法で効果が不十分な場合や痛みが強い場合には関節注射を行うことがあります。関節内注射に用いられる事のある薬は3種類です。

ヒアルロン酸注射
加齢などによって減少するヒアルロン酸を直接関節内に注射します。関節でのヒアルロン酸の産生能を高めたり、痛みや炎症を抑える効果が期待できます。

キシロカイン注射
キシロカインとは痛み止めの薬剤で麻酔薬の一種です。炎症を抑える効果のあるステロイドに混ぜて使用することが多いです。この場合は炎症による痛みも抑えることもできます。

ステロイド注射
ステロイド剤は炎症を抑える効果があるので急性期の激しい痛みに効果的です。ステロイドとは副腎皮質ホルモンの一種で細胞膜を通過して細胞の持つ免疫作用を調整します。

その結果、腫れや痛みを抑えることができます。

先にも述べましたが、痛み止めのキシロカインと混ぜて使用することがあります。肩関節へのステロイド注射は短期的に肩関節の炎症や痛み、早期の可動域獲得に重要な治療と言われています。

一方でステロイド注射には副作用もあるため、ヒアルロン酸注射やNSAIDsとの併用が比較的汎用性があり一般介入として有効とされています。

ステロイド注射の副作用としては、

  • 吐き気や胃痛
  • 長期的に使用すると肝臓や腎臓への障害が発生
  • 肩関節の軟骨や腱組織の脆弱性の増加

が出現する可能性があります。

ハイドロリリース(hydrorelease)
当院では、上記の治療以外に近年注目されている、ハイドロリリースという治療方法も行っています。

ハイドロリリースは、生理食塩水や局所麻酔薬などを用いて癒着している結合組織を剥がす治療法です。

結合組織間に生理食塩水・局所麻酔薬を注入することで、痛みや可動域の改善効果があることがわかっています。

リハビリテーション

肩関節周囲炎の時期に応じて肩の痛みをやわらげる動作指導や肩の働きを改善するリハビリを行います。徒手療法、運動療法、物理療法、生活指導などがあります。

手術療法

消炎鎮痛剤の内服や注射などによる保存的治療により症状が改善しない場合には手術的に治療を検討します。手術の目的は、硬くなった関節包をはがすこと、切り離すことです。

麻酔下徒手的授動術(サイレントマニュピュレーション)

麻酔により眠った後に医師が肩関節に力を加えて動かします。この操作により硬くなった関節包が伸び、切離されることにより肩関節の動きが良くなります。

NSAIDs(エヌセイズ:ロキソニンなど)

四十肩・五十肩の炎症による痛みを抑えるの薬であり、 それ単体で四十肩・五十肩の全ての症状(痛み、 肩・ 腕の動かしにくさ、 こわばりなど)を治療するための薬ではありません。

稀に「ロキソニンを飲めば四十肩・五十肩が治る」と思っている方がいますが、完全に治していくためには、痛みが強い場合はロキソニンを飲んで痛みを抑えてから、肩の可動域制限(動かしにくさ)に対してリハビリや運動療法などを継続していく必要があります。

四十肩・五十肩の場合、ロキソニンや薬はあくまで「補助」をしてくれるものであり、結局は地道に運動を継続して行かなけれなりません。

肩の動かしにくさには「サイレントマニュピレーション」

当院では痛みなく、関節可動域を短期間で大きく拡大させる「麻酔下徒手的授動術(サイレントマニュピュレーション)」も行っています。サイレントマニュピレーションは、麻酔により眠った後に医師が肩関節に力を加えて動かします。

この操作により硬くなった関節包が伸び、切離されることにより肩関節の動きが劇的に良くなります。ロキソニンを飲んでも肩の動かしにくさが気になる、とお悩みの方はぜひお気軽に当院へご相談ください。