五十肩で激痛が出る理由を解説!

四十肩・五十肩でひどい痛みが出ることがあります。激痛が出る場合、どういった場合が考えられるのでしょうか。また、どうすれば痛みを和らげることができるのでしょうか。

四十肩・五十肩とは

中高年期に発症する「四十肩・五十肩」は俗称で、「肩関節周囲炎」と診断されます。突然肩に激しい痛みを感じ、着替えや洗顔といった日常動作が困難になります。

痛むのは多くの場合、片方の肩のみで女性にやや多くみられます。肩関節は、関節包や滑液包と呼ばれる袋状の組織に覆われその中には関節が滑らかに動くよう潤滑油の働きをする液体が入っています。

この関節包や滑液包、またはその周辺に炎症が起こるのが四十肩・五十肩です。

四十肩・五十肩の経過

個人差はありますが、四十肩・五十肩の経過はおおむね発症から1~3か月続く「急性期」、その後1~6か月続く「拘縮期」、さらに6か月~1年続く「回復期」の3段階をたどります。

急性期はちょっとした日常生活の動作で強い痛みを感じるほか、安静時にも痛みがあり眠れないこともあります。

次の拘縮期は炎症が治まり、安静にしているときなどには痛みをほとんど感じません。

ただし、肩関節の動かせる範囲は狭まっており、これは関節包に癒着が起こって縮むため関節が滑らかに動かせなくなる「拘縮」が起きていることに起因します。

最後の回復期は痛みがほぼ治まり日常生活で不便を感じることは少なくなりますが本人が意識していないうちに以前より肩を動かせる範囲が制限されていることがあります。

一般に痛みは鈍くズキズキ、ジンジンといった感じ方を訴える方が多いです。 また、炎症によって痛みで肩を動かせないことにより肩の周辺組織が少しずつ拘縮していきます。

炎症は落ち着いたものの、「痛むために動かせない→拘縮する→さらに動かせなくなる」という状態にあります。

中には激痛が一向に治らない方や夜眠れないくらい痛むのが治らない方もいらっしゃいます。

四十肩・五十肩?ひどく痛む時は

肩がひどく痛み、四十肩・五十肩のような症状が出ている場合、腱板断裂や四十肩・五十肩が慢性化し、痛みが強く出る状態(神経終末の過敏性が亢進している状態)になっている可能性があります。

腱板断裂

四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)とほとんど同じ症状の病気に、腱板断裂があります。

肩の筋肉と上腕骨部の骨頭と呼ばれる部分をつないでいる腱板が切れたり、裂けたりして痛みを引き起こす病気です。

腱板とは肩の周囲にある4つの筋肉(棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋)の腱の総称で断裂しやすいのは棘上筋腱です。年齢が上がるにつれ断裂の確率が高くなり男性に多くまた、利き腕に多く発症します。

加齢に伴う腱板の質の低下に加え、手を上げるスポーツなどによる肩の使い過ぎやけがなどが原因になります。

腱板断裂は肩を動かすと痛みが出たり痛みで腕が上がらなくなるなど四十肩・五十肩と同様の症状が現れます。

ただ四十肩・五十肩が多くの場合、徐々に痛みがなくなって自然に治っていくのに対し腱板断裂の場合は痛みが治まっても断裂した腱が自然につながることはありません。

また、四十肩・五十肩が腕がこれ以上上がらないという段階で痛むのに対し、腱板断裂は腕の上げ下げの途中で痛みが起きるのも特徴です。

慢性的な四十肩・五十肩

また、四十肩・五十肩でも慢性化し、筋力が弱くなることで正常な肩関節の動きができなくなり、異常な細い血管(モヤモヤ血管)が肩関節周囲に発達してしまい、過敏に痛みを出す場合も、辛い痛みが長引く傾向にあります。

腱板断裂と四十肩・五十肩の違い

腱板断裂と五十肩はどちらも肩が痛く、動きが悪くなる病気です。腱板断裂では「痛いが何とか腕が上がる」五十肩では「痛いしどうやっても腕が上がらない」ことが多いという違いがあります。

腱板断裂はインナーマッスルが腕の骨からはがれてしまう病気です。インナーマッスルの力が伝わらなくなり痛みの原因となりますが、表層にあるアウターマッスルの力で腕を上げることができます。

一方、四十肩・五十肩は肩の関節そのものが硬くなってしまう病気です。いくらインナーマッスルやアウターマッスルの力が強くても腕を上げることができません。

腱板断裂では腱の自然修復が期待できないために手術で治療されることがあるのに対して四十肩・五十肩では期間は要するものの自然に回復することが期待できるため保存的に治療されやすいという点も大きな違いです。

ただし、例外的な状況が起こることも少なくありません。

両者の鑑別は必ずしも簡単ではなく、治療に対する反応を継続的に診ていく、MRIなどの精密検査を行うといった専門医による対応が必要です。

四十肩・五十肩の診断と治療

医療機関では触診や肩の動きの確認に加え、エックス線、超音波、MRIなどの画像検査で診断します。

四十肩・五十肩と診断された場合は飲み薬や注射などによって痛みをやわらげた後、運動療法を行います。

肩関節の可動域が狭くなるのを防ぐストレッチや振り子のように腕を動かしたりする運動があります。それでも症状が改善しない場合は手術を検討することがあります。

四十肩・五十肩の痛みへの対処法

初期の痛みが強い時期は、まず安静が必要です。 肩を無理に動かさず、痛みが非常に強い時には一時的に三角巾なども用いて肩の安静を保つようにします。

痛みを軽くするために貼り薬や消炎鎮痛薬の内服、関節内にヒアルロン酸やステロイド、ハイドロリリース注射を行う方法もあります。

夜間痛がある時は寝方にも注意し仰向けで寝る場合は肩の下にタオルやクッションを置き痛みが出ないようにして炎症が長引かないようにすることが大切です。

拘縮期は肩関節が硬くならないように無理のない範囲で徐々に運動を取り入れます。回復期は拘縮期以上に積極的に肩の運動を行います。

ただし、無理に肩を動かすと痛みが再発することもあるので油断は禁物です。肩関節の動きがなかなか改善しない場合は癒着している関節包を破る治療(薬の注入や関節鏡手術など)を行う場合もあります。

四十肩・五十肩は自然に治ることもある疾患ですが治るまでの経過や期間には個人差があるため痛くて眠れないなど日常生活に支障がある場合は医療機関の受診をおすすめします。