中々五十肩が治らない理由は何?長期間続く痛みについて解説

リハビリ室

「四十肩・五十肩は放っておけば治る」と世間で言われることがありますが、一方で、なかなか治らずに何年も辛い痛みが慢性化している方もたくさんいます。なぜ四十肩・五十肩はこのように、放っておけば治るとか、逆になかなか治らないと言われたりするのでしょうか。

四十肩・五十肩とは

四十肩・五十肩は俗称で、正しくは「凍結肩」や「肩関節周囲炎」と呼ばれています。肩の周りに炎症が起きて、関節の痛みや動きが悪くなることを総じて「 四十肩・五十肩」といいます。数日で治るものから、肩がガチガチに硬くなって大変動かしにくくなる場合もあります。中には「腱板断裂」といった腱の損傷が原因だったり、石灰がたまることもあります。

四十肩・五十肩の原因

明らかな原因は不明ですが、 靭帯や腱、関節包、滑液包、骨、軟骨など肩関節を構成する組織に炎症が起きることで痛みや拘縮につながります。このように、明らかな素因なしに発症する場合と、その他疾患に関連して生じる可能性があります。また、老化など組織の変性により起こりやすいとも言われています。経年的な日常生活や仕事、趣味活動など、くり返す肩への負担や刺激により発症しやすくなります。

四十肩・五十肩の症状

主な症状は、肩周囲の(稀に腕も)痛みと肩関節の運動制限です。それにより日常生活が障害されます。

痛み

四十肩・五十肩の肩の痛みは日常の様々なタイミングで出現します。主に3つに分類できます。

安静時痛:安静にしている時に出る痛み

  • 椅子に座っている時に痛い
  • じっとしている時に痛い
  • 肩を動かさず何もしていなくても痛い

動作時痛:肩を動かした時に出る痛み

  • 手を上に挙げた時に痛い(棚の上に手を伸ばす・バンザイをする)
  • 手を後ろ・背中に回した時に痛い(スボンにベルトを通す)

夜間時痛:夜間、睡眠時に出る痛み

  • 肩が痛くて寝付けない
  • 肩が痛くて目が覚める

運動制限

四十肩・五十肩の症状の特徴として、痛みや拘縮があり、肩が動かしにくくなります。

  • 高いところに手が届かない
  • 服の着替えが辛い
  • 洗髪がやり難い
  • 反対の脇に手が届かない

など

可動域制限(拘縮)は、特に肩関節の屈曲(上に挙げる)、外旋(外に開く)、内旋(手を背中に回す)が制限されていきます。

四十肩・五十肩の経過

五十肩には、「急性期」「慢性期」「回復期」があります。発症してから3カ月の急性期は痛みがとても激しい時期です。その後1年ほどを慢性期といい、痛みは少しずつ治まりますが、肩が動かしにくくなります。発症から1年以上経過すると痛みはほとんどなくなり、肩の動きもある程度回復します。(もちろん、個人差があります。)

急性期

一般的には症状が現れてから2週間程度が、違和感や激しい痛みと共に可動域が急速に低下します。この時期を急性期といい、この期間の痛みは筋肉を痙攣(けいれん)させてしまい、さらに痛みが強くなります。

そうなると、運動時だけではなく、安静時にも痛みが生じ、就寝時にも寝返りで目が覚めてしまうこともあります。

この時期は、炎症が起こっている時は患部を冷やし、炎症が治まっている時は患部を温めることが大切です。医師にしっかりと診察をしてもらい、適切な手当をすることが大切です。

慢性期

急性期の2週間程度が過ぎた後は、痛みは和らいできます。しかし、その後、約半年程は肩関節の可動域が低下したまま慢性期となります。この時期でも、夜に横になった時など、痛む肩への負担が強くなると痛みが現れることもあります。就寝時に痛む時は枕を変えたり、クッションを当てたりすると負担を軽くすることができます。回復期にもこうした生活の工夫が必要です。

回復期

およそ半年が過ぎた頃から、まだ少し肩にひっかかりなどの可動域制限が残るものの、痛みはほとんどなくなります。徐々に肩も動くようになって半年ほどで自然回復をすることが多いのですが、この時期にあまり動かさないでいると、筋力も低下し、可動域が狭まったままになります。その為、可動域を拡げるリハビリテーションが重要となります。

各時期別の治療

肩関節周囲炎は、時期を考慮した治療・対処が大切です。

炎症期

まず炎症を改善させることが最優先です。そのために、日常生活や仕事などで炎症が増悪しないよう無理をせず適切に安静することが必要です。

また、薬物治療で早期に炎症・痛みを軽減させることも大切です。痛みがあまりに強い場合は三角巾を使用します。

慢性期

痛みが軽減し運動制限(拘縮)が主体となる時期です。炎症が軽減しているため少しずつ運動を行い、拘縮の増悪予防、改善を図ります。リハビリ後や日常で動かした際などに痛みが出る場合、内服を継続します。

回復期

回復に向けしっかりと運動することが必要になります。拘縮が残存しないよう注意が必要です。積極的に可動域改善のためのストレッチや、筋力強化などの運動療法を行います。

この時期は特に積極的なリハビリを行うことで回復が早くなります。運動療法による改善が乏しい場合には、手術療法を検討することがあります。

「四十肩・五十肩が放っておいても治る」と言われるのはなぜ?

四十肩 五十肩は放っておいても治ると言われ、 医療機関を受診しない方も多いと言われています。

上述の通り、四十肩 五十肩の原因は肩関節周囲に起きる炎症による痛みと関節可動域制限なので、 炎症が素早く収まれば放っておいても治ります。

しかし、実際は、放っておくと炎症は長引き、いつまでも痛みが続く傾向にあります。 なぜなら肩関節は日常生活で最もよく使う部位である腕と連結している関節であり、腕を使う限り肩関節への負担が少なからずあるからです。

四十肩・五十肩になって炎症が起きている時に腕と肩を動かし、痛みを我慢していると、炎症はいつまでたっても(長い場合は 何年も)完治しないのです。

四十肩・五十肩で痛みが出た時、つまり、炎症が強い時期にその時期に応じた対処法を適切なタイミングで行えば、炎症は比較的すぐに収まり、早期に痛みなく肩を動かすことができるようになります。

四十肩・五十肩がなかなか治らない」人が多いのはなぜ?

四十肩・五十肩がなかなか治らないのは、日常生活の中で痛みがある肩関節を無理やり動かさなければならないことが多いからです。

肩関節周囲炎になると、お風呂で頭を洗う時、車で運転席から後席に手を伸ばす時など、日常の様々な場面で痛みがあり、その都度炎症が悪化してしまいます。

結果的になかなか治らなくなってしまいます。したがって「 四十肩・五十肩は自然に治らない」と考えておくべきです。

また四十肩・五十肩には、その進行の時期に応じた適切な治療方法の判断・選択が早期回復に重要になります。

医療機関で専門家に診断してもらうことで、その時期を適切に見定めることができますが、 四十肩・五十肩になった患者様本人がそれを適切に見極めることはかなり難しく、 放っておくと治療のタイミングを誤ってしまうことになりかねません。

四十肩・五十肩は、上述のように肩関節周囲の組織に炎症がおきる疾患です。

医療機関で診断し、時期に応じた治療を行い、炎症をできるだけ早く収める処置をすることでその後の後遺症(肩関節の可動域制限)を少なくすることができます。

放っておくと、炎症が治るまでに長期間を要し、痛みを長引かせて不要な不便さを味わいますし、いつまで立っても小さい炎症が続く状態になってしまいます。放っておかずに、早めの受診(専門家による診断)と対処が大切です。