「子どもの腕が抜けた!?」と思ったら… 整形外科で診てもらうべき「肘内障」とは

肘内障

「子どもの腕が抜けた!?」そんな時、頭をよぎるのが「肘内障」です。肘内障は、小さなお子さんを持つ保護者なら、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか? この記事では、子どもの腕が急に動かなくなった際に疑うべき「肘内障」について、その原因や症状、治療法から予防法まで、わかりやすく解説します。お子さんの腕の異変に戸惑う前に、ぜひこの記事を読んで、正しい知識を身につけておきましょう。

1.1 肘内障はどんな病気?

肘内障とは、5歳以下の幼児に多く見られる肘の関節の障害です。正式には「小児橈骨頭亜脱臼」と言い、肘の関節にある橈骨頭という部分が、靭帯から一部または完全に外れてしまうことで起こります。

子どもの骨は柔らかく、靭帯も未発達なため、大人のように骨が完全に外れることは稀です。そのため、レントゲン検査では異常が見られない場合もあります。肘内障は、子どもの腕を引っ張ったり、手を強くひねったりした際に発生しやすいため、保護者の方々は注意が必要です。

肘内障は、適切な処置を受ければすぐに治ることがほとんどですが、放置すると肘の変形や運動障害が残ってしまう可能性もあるため、早期の診断と治療が重要です。気になる症状があれば、速やかに整形外科を受診しましょう。

1.2 肘内障になりやすい年齢や性別は?

肘内障は、主に1歳から4歳くらいまでの幼児に多く見られます。特に2歳頃に最も多く発生すると言われています。これは、この時期の子どもは、骨や靭帯が未発達で、体重に対して頭が大きいため、腕を引っ張られるなど、わずかな力で肘関節に負担がかかりやすいことが原因と考えられます。

また、男の子よりも女の子の方が、肘内障を起こしやすいというデータもあります。これは、女の子の方が骨や靭帯の発達が遅く、関節が緩い傾向があるためと考えられています。ただし、男の子でも肘内障になることはありますので、注意が必要です。

年齢肘内障の発生率
1歳未満まれ
1歳増加傾向
2歳最も多い
3歳やや減少
4歳減少傾向
5歳以上まれ

(参考:日本臨床外科学会雑誌

2. 肘内障の原因と症状

2.1 よくある肘内障の原因

肘内障は、5歳以下、特に2~3歳の幼児に多く見られる疾患です。この時期の子どもは、身体的な特徴から肘内障を起こしやすくなっています。肘関節は、上腕骨、橈骨、尺骨の3つの骨で構成されており、子どもの骨や靭帯は未発達で柔らかく、大人のようにしっかりと固定されていません。そのため、大人の力加減では、何気ない動作でも肘関節に負担がかかり、肘内障を引き起こす可能性があります。

具体的な例として、以下のような動作が挙げられます。

  • 子どもを抱き上げる時
  • 子どもの手を急に引っ張った時
  • 子どもが転倒し、手をついてしまった時
  • 鉄棒などでぶら下がる遊びをした時

これらの動作は、子どもの肘に捻る力や引っ張る力が加わりやすく、肘内障のリスクを高めます。特に、子どもを抱き上げる際は、片手だけで持ち上げずに、両手でしっかりと支えるようにしましょう。また、子どもと手をつなぐ際は、急に引っ張ったり、手を振り回したりしないように注意が必要です。子どもの骨や関節は成長段階にあり、大人よりもはるかに繊細であることを理解し、優しく接することが大切です。

2.2 肘内障でみられる症状

肘内障の主な症状は、肘の痛みと腕の動きの制限です。子どもは痛みのために腕を動かさなくなり、肘を軽く曲げたままの状態で、手を握ったり、物を掴んだりすることが難しくなります。また、泣いて訴えたり、ぐったりしたりすることもあります。肘の内側を押すと痛がる場合もあります。ただし、腫れや変形などの目立った外傷が見られないことが多いのも特徴です。そのため、保護者は子どもの様子をよく観察し、異変に気付くことが重要です。

肘内障は、適切な処置を受ければ、通常は後遺症を残さずに治癒します。しかし、早期に発見し治療することが重要です。もし、お子様に上記のような症状が見られる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。自己判断で整復を試みることは大変危険です。必ず専門医の診断と適切な治療を受けてください。

参考資料:

3. 肘内障の治療法

肘内障と診断された場合、その治療は基本的に保存療法が中心となります。比較的簡単な処置で改善することが多いですが、自己判断で整復を試みるのは大変危険です。必ず医療機関を受診し、適切な治療を受けてください。

3.1 整形外科での肘内障の治療

整形外科を受診すると、医師はまず子どもの腕の状態や症状を診て診断します。肘内障と診断された場合、一般的には徒手整復という方法で治療を行います。

3.1.1 徒手整復とは

徒手整復とは、医師が子どもの腕を一定の方向に優しく動かすことで、亜脱臼を起こしている橈骨頭を元の位置に戻す治療法です。整復操作自体は数秒から数十秒で終わることがほとんどで、痛みもほとんどない場合が多いです。整復が成功すると、子どもはすぐに腕を動かせるようになり、痛みが消失します。 整復後は、再発防止のために三角巾などで1週間程度、安静を保つように指導されることがあります。

3.2 肘内障の治療後の注意点

肘内障は一度治っても、繰り返しやすいという特徴があります。そのため、治療後も日常生活で注意が必要です。

3.2.1 再発予防のために

  • 子どもの腕を必要以上に引っ張ったり、振り回したりしない。
  • 子どもが自分で腕を引っ張ったり、遊具にぶら下がったりしないよう注意する。
  • 転倒時に腕を引っ張ってしまわないよう、手をつなぐ際は手首を持つようにする。

肘内障は適切な治療と予防を心がけることで、後遺症を残さずに治癒する可能性が高い疾患です。子どもの腕の痛みや動きの異常を感じたら、自己判断せずに速やかに整形外科を受診しましょう。

参考資料:公益財団法人 日本整形外科学会

4. 肘内障を予防するために

肘内障は、乳幼児期に多く見られる疾患ですが、日常生活での注意や工夫によって予防することができます。ここでは、肘内障を防ぐための具体的な方法を紹介します。

4.1 日常生活での注意点

肘内障の多くは、子どもの腕を急に引っ張ったり、手をついて転倒したりすることが原因で起こります。そのため、日常生活では以下のような点に注意することが大切です。

  • 子どもの腕を急に引っ張らない
    子どもと手をつないで歩く際や、抱き上げる際には、子どもの腕を急に引っ張らないように注意しましょう。特に、子どもが転びそうになった時など、とっさに腕を引っ張ってしまうことがありますので、意識して注意することが大切です。遊びの際も、子どもの腕を必要以上に引っ張ったり、振り回したりする行為は控えましょう。
  • 重い荷物を持たせない
    子どもに重い荷物を持たせることは、肘関節に負担をかけることになります。子どもの体格に合った重さのものを持たせるようにし、重い荷物を持たせる必要がある場合は、リュックサックなど両肩で背負えるものを使用するようにしましょう。
  • 手をつないで歩くときは子どものペースに合わせる
    子どもと手をつないで歩くときは、大人が先導して歩くのではなく、子どものペースに合わせてゆっくりと歩くようにしましょう。子どもは大人よりも歩幅が狭いため、大人のペースに合わせて歩くと、子どもの腕が引っ張られることになり、肘関節に負担がかかります。
  • 転倒しにくい環境を作る
    家の中や遊び場など、子どもが過ごす場所では、転倒しにくい環境を作るように心がけましょう。床に物が散乱している場合は片付けたり、段差がある場所にはマットを敷いたりするなどの工夫をすることで、転倒のリスクを減らすことができます。

4.2 肘への負担を減らすには

日常生活の中で、肘への負担を減らすことを意識することも大切です。特に、以下のような点に注意してみましょう。

  • 鉄棒やブランコなど、腕に負担がかかる遊具で遊ぶ際には注意する
    公園などで遊ぶ際には、鉄棒やブランコなど、子どもの腕に負担がかかりやすい遊具で遊ぶ際には注意が必要です。子どもだけで遊ばせるのではなく、必ず大人の付き添いの下で遊ばせるようにしましょう。また、遊具の正しい使い方を教え、無理な体勢にならないように注意することも大切です。
  • 体操教室などに参加する場合は、指導者の適切な指導を受ける
    体操教室など、運動を行う際には、指導者の適切な指導を受けるようにしましょう。子どもの発達段階に合わせた運動内容や強度であるか、安全面に配慮した指導が行われているかなどを確認することが大切です。

肘内障は、適切な予防策を講じることで防ぐことができるケースが少なくありません。今回ご紹介した内容を参考に、お子さんの肘を守り、健やかな成長をサポートしてあげてください。 もし、肘内障が疑われる症状が見られた場合は、自己判断せずに速やかに医療機関を受診しましょう。

参考資料:

5. まとめ

この記事では、子どもの腕が抜けたように見える症状が現れる「肘内障」について解説しました。肘内障は、主に幼児期に起こりやすい病気で、子どもの腕を引っ張ったり、手をついて転んだりすることが原因で起こることが多いです。肘の関節が亜脱臼を起こしている状態のため、無理に動かしたり、放置したりすると悪化する可能性があります。肘内障が疑われる場合は、自己判断せずに、速やかに整形外科を受診しましょう。適切な処置を受けることで、ほとんどの場合、後遺症を残さずに治癒します。保護者の皆様は、肘内障の知識を深め、予防にも努めましょう。