五十肩や四十肩で注射を打つ前に知っておくべき知識

肩が痛い、 腕が上がらないなど四十肩・五十肩の 痛みは大変辛いものです。医療機関で行われる四十肩・五十肩に対する注射は果たして効果があるのでしょうか。

効果があるとしたら、どのような作用があるのでしょうか。今回は、四十肩・五十肩に効く注射の種類についてご紹介します。

四十肩・五十肩とは

一般的に四十肩・五十肩と呼ばれますが、医学的には肩関節周囲炎と呼ばれる疾患です。五十肩は一般的には半年~1年ほどで自然回復するとされていますが、実際には痛みで不眠や肩が上がらず、何より「1年近くも痛みや肩が動かないのを我慢して自然回復を待つのは辛い」という声をよく聞きます。

四十肩・五十肩の原因

五十肩では、肩の関節を形作る膜でできた袋(関節包)に、炎症が起きた後に癒着が発生し、関節包が肥厚することで関節の体積が大きく減少し、肩が硬くなります。

関節包に炎症が起きる原因や癒着が起こり肥厚する原因が細かく分かっているわけではありません。特に思い当たるきっかけがなく起こることもあれば、軽度のけが(肩を少しぶつけた、力仕事をしたなど)がきっかけになることもあります。

厳密には五十肩の発症原因は不明とされています。

四十肩・五十肩の症状

五十肩の症状は肩の痛みと、肩が硬くなることです。段階的に症状が変化する特徴があります。

初期は夜間の痛みやこわばりが目立つ時期があり、徐々に痛みが引いてくるものの、次に肩がとても硬い時期がきます。

その後少しずつ動きが改善するという3段階の経過があります。

四十肩・五十肩の進行

初期(疼痛期・炎症期)

初期の段階は痛みが目立ちます。じっとしていても肩がズキズキ痛む、夜間になると痛みが強くなる、などの特徴があります。耐えがたい痛みのために睡眠不足になるなど、日常生活に支障をきたすため非常につらい時期です。期間については個人差が大きく、目安として2-9ヶ月続くことが一般的です。

拘縮期

痛みは徐々に引いてきますが肩の動きの制限が残ります。肩の硬さが主な症状となるため拘縮期と呼ばれます。

頭の上に腕を伸ばす、運転席から車の後部座席の荷物をとる、エプロンのひもをしめる、逆側の脇の下や肩の後ろ側を洗うことができない、など生活に支障がある状態です。

痛みは完全になくなるわけではなく肩の動きの限界まで動かすと痛みを感じます。拘縮期は4-12ヶ月間続きます。

回復期

その後、徐々に肩の動きが改善してきます。ある日急に改善するということはなく、長期間かけて徐々に回復します。早くても5ヶ月、長いと24ヶ月(2年)かかることもあります。

四十肩・五十肩の治療としての注射

四十肩・五十肩の治療には各種作用を持った注射も積極的に検討されます。

注射のメリット

注射は他の治療法にはない様々な良い効果があります。

1,体に負担が少ない

切開が必要なく、体への負担もほとんどありません。注射による治療は治療時間の短さも特徴的です。

2,軟骨の保護で痛みを緩和

ヒアルロン酸は関節内に存在し、関節の滑らかな動きをサポートする成分です。その作用から関節の痛みの緩和が期待できます。

3,炎症抑制効果

軟骨の保護や関節の潤滑の他、炎症を抑えると言われているヒアルロン酸やステロイドが用いられます。痛みや熱感の軽減が図れます。

ステロイド注射

ステロイドという炎症を抑える薬を関節内に注射することで、四十肩・五十肩の痛みの改善や可動域の改善を図ることがあります。

四十肩・五十肩の原因はいろいろありますが、上腕二頭筋の長頭腱の炎症と、腱板損傷およびそれに伴う滑液包炎が多いです。

確実に良い部位に注入するためにエコー画像をリアルタイムで見ながら針を進め画像を見ながら薬液注入その拡がりを見ながら針先の位置微調整などをしていきます。

ステロイド注射の副作用としては、

  • 吐き気や胃痛
  • 長期的に使用すると肝臓や腎臓への障害
  • 肩関節の軟骨や腱組織の脆弱性の増加が出現する可能性があります。

注射で効果が出る方は早期に痛みが改善します。

ただし、ステロイド注射の場合は年間で投与できる目安の量があり、繰り返し投与すると腱や靱帯を萎縮・断裂させる可能性があるので、頻回の投与はおすすめしません。

ステロイド注射は病気になって間もない時期に強い痛みを緩和するための一時的な手段として用いられることが多く、運動療法(筋トレやストレッチ)との併用が必須です。

ヒアルロン酸注射

体の中に元から存在するヒアルロン酸と同じ成分の薬を使用した治療です。粘り気や弾力性を持ったヒアルロン酸を肩関節へ注入することで、痛みの緩和や関節の滑りが良くなるといった効果が期待できます。

基本的には運動療法(筋トレやストレッチなど)と組み合わせて行われます。整形外科で広く取り入れられている、一般的な四十肩・五十肩に対する保存療法のひとつです。

神経ブロック注射

肩や上肢の痛みがある部位に局所麻酔薬を注射することにより、痛みの悪循環を改善します。硬膜外ブロックや星状神経節ブロックより比較的浅い神経に注射するため、通常の予防注射などと同様に気軽に受けて頂くことが可能です。

ハイドロリリース(hydrorelease)

当院では、上記の治療以外に近年注目されているハイドロリリースという治療方法も行っています。

ハイドロリリースは生理食塩水や局所麻酔薬などを用いて癒着している肩関節周囲の結合組織を剥がす治療法です。

結合組織間に生理食塩水・局所麻酔薬を注入することで、痛みや可動域の改善効果があることがわかっています。

上述のヒアルロン酸はいずれ体内に吸収されるため作用期間が限られていることステロイド注射は炎症を抑えるためには効果的ですが長期的な使用では副作用の懸念があるため当院では四十肩・五十肩の治療には副作用の心配がないハイドロリリース注射をおすすめしています。

四十肩・五十肩の痛みや関節可動域制限でお悩みがある方は、当院にお気軽にご相談ください。