五十肩にヒアルロン酸注射をしたけど効かないのはなぜ?

五十肩の治療としてヒアルロン酸注射が行われる場合が多いですが、 あまり効果を感じないという方がいらっしゃるのも事実です。 それはなぜなのでしょうか。

四十肩・五十肩とは

中年以降の人が、肩が痛くて動かしにくくなった場合、一般的に「五十肩」と呼ばれます。

しかし、「五十肩」は 正式名称ではなく、医療の分野では「肩関節周囲炎」といったり、肩がガチガチになって動かない場合は「凍結肩」と呼ばれたりします。また「四十肩」と呼ばれることもありますが、病態は同じです。

ただし、似たような症状をきたす原因の明らかな他の疾患(腱板断裂 、石灰沈着性腱板炎 、インピンジメント症候群 、変形性肩関節症 など)がたくさんありますので、それらをすべて除外したうえで「肩関節周囲炎」と診断します。

おおまかに言えば「五十肩」とは、“特に原因がはっきりしない中年以降におこる肩の痛みと運動制限をきたす症候群”のことを指します。

四十肩・五十肩の治療法

四十肩・五十肩の治療法には保存療法(手術をしない治療)と手術療法があります。

保存療法(手術しない治療)

病期によって治療法は異なってきます。初めの痛みが強い時期は安静を保ち、肩への機械的刺激を極力減らすことが重要です。

とにかく痛みが出るような動きを避けます。夜間就寝時には、肩から肘の後ろに座布団などを敷き、枕を抱えるようにして眠ると肩の痛みが出にくくなります。

まず痛みを抑えるために、鎮痛剤や湿布の処方を行ったり、炎症を抑えるためのステロイド剤や潤滑効果のあるヒアルロン酸の注射を行ったりします。

拘縮が主な症状になってくると痛みは落ち着いてきますので、その頃を見計らって肩の動きを良くするためのリハビリを開始します。

基本的にはホームプログラム(自主トレーニング)を中心として、ストレッチを行いながら経過をみていきます。

痛みが沈静化してきたら、肩をしっかり温めて局所の循環を良くすることも効果的です。

手術療法

保存療法でなかなか改善がみられない場合、とくに動きが極端に悪い場合には手術療法を行うことがあります。その一部をご紹介します。

関節授動術(サイレントマニュピレーション)

肩に麻酔をかけた状態で、肩関節をストレッチして関節の動きを取り戻します。「切らない手術」と呼ばれており、注射のみで痛みを取り、関節可動域を大きく改善させることができます。

当院でも行っているお勧めの治療方法です。

鏡視下関節包切離

肩関節内を内視鏡で観察しながら、硬く縮こまった関節包を電気メスにて切開し、関節内を広げて肩の動きを良くします。

四十肩・五十肩の注射について

四十肩・五十肩の治療として、各種薬剤を注射する治療法も頻繁に用いられます。

ステロイド注射

ステロイドという炎症を抑える薬を関節内に注射します。四十肩・五十肩の痛みの改善や可動域の改善を図ります。

四十肩・五十肩の原因はいろいろありますが、確実に効果が出る部位に注入するために、エコー画像をリアルタイムで見ながら針を進め、画像を見ながら薬液注入し、針先の位置微調整などをしていきます。

ステロイド注射の副作用としては、

  • 吐き気や胃痛
  • 長期的に使用すると肝臓や腎臓への障害
  • 肩関節の軟骨や腱組織の脆弱性の増加が出現する可能性があります。

注射で効果が出る方は早期に痛みが改善します。

ただし、ステロイド注射の場合は年間で投与できる目安の量があり、繰り返し投与すると腱や靱帯を萎縮・断裂させる可能性があるので、頻回の投与はおすすめしません。

ステロイド注射は病気になって間もない時期に強い痛みを緩和するための一時的な手段として用いられることが多く、運動療法(筋トレやストレッチ)との併用が必須です。

ヒアルロン酸注射

体の中に元から存在するヒアルロン酸と同じ成分の薬を使用した治療です。粘り気や弾力性を持ったヒアルロン酸を肩関節へ注入することで、痛みの緩和や関節の滑りが良くなるといった効果が期待できます。

基本的には運動療法(筋トレやストレッチなど)と組み合わせて行われます。

整形外科で広く取り入れられている、一般的な四十肩・五十肩に対する保存療法のひとつです。

神経ブロック注射

肩や上肢の痛みがある部位に局所麻酔薬を注射することにより、痛みの悪循環を改善します。硬膜外ブロックや星状神経節ブロックより比較的浅い神経に注射するため、通常の予防注射などと同様に気軽に受けて頂くことが可能です。

ハイドロリリース(hydrorelease)注射

当院では、上記の治療以外に近年注目されている、ハイドロリリースという治療方法も行っています。

ハイドロリリースは、生理食塩水や局所麻酔薬などを用いて癒着している肩関節周囲の結合組織を剥がす治療法です。

結合組織間に生理食塩水・局所麻酔薬を注入することで、痛みや可動域の改善効果があることがわかっています。

上述のヒアルロン酸はいずれ体内に吸収されるため作用期間が限られていること、ステロイド注射は炎症を抑えるためには効果的ですが、長期的な使用では副作用の懸念があるため、当院では四十肩・五十肩の治療には副作用の心配がないハイドロリリース注射をおすすめしています。

四十肩・五十肩にヒアルロン酸注射が効かないのはなぜ?

肩関節では、ヒアルロン酸が「潤滑油」として働きます。関節は骨と骨が接して動く部分なので、スムーズに動かすためにはこの潤滑油が非常に重要です。

ヒアルロン酸が十分にあることで、骨と骨が直接ぶつからずに済み、痛みを感じることなく動かすことができます。

しかし、ヒアルロン酸は 徐々に体内に吸収されていくため、効果がずっと続くわけではありません。

1ヶ月に1〜2回の頻度でヒアルロン酸の注射を続けることが多いです。さらに、四十肩・五十肩は肩関節の炎症が続くと、 筋肉や周辺組織の柔軟性が損なわれ、固まって癒着してしまいます。

そうなるとヒアルロン酸を一時的に注射しても効果はごく限定的なものになってしまい、あまり効果を感じられなくなることがあります。

そこで当院では、「ハイドロリリース注射」「サイレントマニピュレーション」「五十肩に特化したリハビリ」を行っています。

当院で行う五十肩治療は非常に効果が高く、ヒアルロン酸注射で効果を感じられなかった方にはおすすめの治療法です。

四十肩 五十肩の痛みで悩んでいる方、 ヒアルロン酸注射が効かなくて悩んでいる方は、是非当院にお気軽にご相談ください。