骨粗鬆症治療薬の使い分けについて解説

骨粗鬆症治療薬の使い分けについて解説

骨粗鬆症の治療薬はいっぱいあるけど、どのように使い分けられているの?

それぞれの薬で注意する点は何かあるの?

薬の種類はとても多いので、このように思われる方も多いのではないでしょうか?

骨粗鬆症の治療薬は様々なものがありますが、どのように使い分けられていると思いますか?

それぞれの薬には注意点があり、そこから考えると、適用になる患者さんと適用にならない患者さんに分けることができます。

今回の記事では、骨粗鬆症治療薬がどのように使い分けられているのか、薬の注意点などから解説していきたいと思います。

様々な種類がある骨粗鬆症治療薬

骨粗鬆症治療薬にはいろいろな種類があります。

点滴で投与するもの、内服するもの、自分で注射をするもの、ゼリー状のもの。

効果もさることながら、投与方法も様々です。

骨粗鬆症治療薬のタイプ別に分けて、どのように薬を使い分けているのか、注意点などから解説していきます。

ビスホスホネート薬

代表的なビスホスホネート薬は、リクラスト、ボンビバ、ボナロンなどです。

ビスホスホネート薬は、破骨細胞を選択的に弱らせることができる薬です。破骨細胞を弱らせることにより、相対的に骨の密度を上昇させます。

内服のタイミングは、週1回~4週に1回まで、薬により様々です。錠剤を飲むことが

できない方に対しては、点滴や注射で投与をすることができます。

同じビスホスホネート薬でも、内服、注射、点滴と種類があるため、内服で効果が出なかった場合でも、注射や点滴に切り替えることができます。

ゼリー状の薬もあるため、高齢で嚥下機能が落ちてしまっている人に対しても処方をすることが可能になっています。

ビスホスホネート薬は消化管からの吸収率が低いため、服用後30分程度は、摂取する飲食物に注意が必要です。特にカルシウムを含む飲食物には注意が必要で、ビスホスホネートの吸収が阻害されてしまう可能性があります。

また、ミネラルウォーターにもカルシウムが多く含まれている場合があるため、習慣的にミネラルウォーターを飲んでいる人の場合は注意が必要です。

さらに、服用後30分間は、横にならないようにすることが重要となります。理由は、薬が消化管に影響を与える可能性があるからです。

そのため、腰の痛みや体力面の問題で、30分以上座っていられない方は、ビスホスホネートの服用は適用にはなりにくいことが考えられます。

また、口腔内の環境にも配慮が必要です。ビスホスホネート薬に関連した顎の骨の炎症が報告されているため、抜歯を伴うような外科的治療が必要な場合は、ビスホスホネート薬は適応外になります。

注射でも同様のリスクが考えられるため、内服なのか注射なのかは、関係ありません。

ビスホスホネートを使用する予定の患者さんで、歯科治療が終わっており、口腔内の衛生状態が問題なければ、投与を延期する必要はありません。

もし、歯の治療を近々予定しているのであれば、歯の治療が終わってから、ビスホスホネート薬の開始になります。

選択的エストロゲン受容体作動薬(SERM)

選択的エストロゲン受容体作動薬(以下、SERM)は閉経とともに減少する女性ホルモン、エストロゲンと同じような作用をする薬です。

調査によると、SERMの服用により血栓ができやすくなるとされています。

そのため、もともと基礎疾患で循環器系の病気がある方や脳梗塞などの病気の経験がある方に対しては、処方に注意が必要だと考えられます。

SERMは骨の強度を上げ、骨折リスクを減らすだけでなく、背中~腰にかけての”痛み”に対して効果が出やすいことがわかっています。

そのため、痛みで困っている患者さんには適応になる可能性があります。

カルシトニン薬

カルシトニン薬は、破骨細胞の活動を抑えてくれる薬ですが、特に”痛み”に効果を表すことがわかっています。

痛覚過敏の解消や、血流の改善効果も見られているため、痛みが強い患者さんへ適応になる可能性が考えられます。

鎮痛効果が高いため、歩行練習など、リハビリの効果も出やすくなるとの結果も出ています。その結果、QOL(生活の質)も向上するとされています。

副甲状腺ホルモン薬

副甲状腺ホルモン薬は、すでに骨密度が多く低下してしまっている方や、骨折を経験されている方に対して用いられる薬です。

副甲状腺ホルモン薬は、自己注射をするか、週1回通院し注射をしなければいけないため、治療を続けていく通院負担が大きい薬です。

通院が難しく、自己注射も難しい場合、選択できない可能性が考えられます。

自分で注射ができなくても、家族や友人のサポートがある場合は、処方が可能な場合もあるため、医師と相談してみましょう。

また、他の薬と比べて値段が高いため、経済的に心配がある方にとっては苦しい選択になるかもしれません。

しかし、骨密度の上昇や骨折の予防効果は高いとされているため、投与できるのであれば、選択していきたい薬ではあります。

抗RANKL抗体薬

抗RANKL抗体薬は、破骨細胞が活性するRANKLというタンパク質に対して反応する薬で、破骨細胞の活性化を抑えてくれる薬です。

抗RANKL抗体薬の副作用として、低カルシウム血症が挙げられます。低カルシウム血症は、腎臓の機能が弱い人に出やすいため、抗RANKL抗体薬を処方する前に腎臓の機能を確認し、機能の低下がないかどうか確認する必要があります。

腎臓の機能が弱い方に対しては、副作用が出る可能性が高くなるので、処方は考えなければなりません。

また、ビスホスホネート薬と同様に、顎の骨に炎症が出る副作用も考えられるため、歯の治療を予定している人は、歯の治療を優先する必要があります。

まとめ

いかがだったでしょうか?

骨粗鬆症の薬とはいえ、効果や副作用、注意点は様々であることがお分かり頂けたと思います。

患者さんの状態は人により様々です。患者さんの状態に合わせて、合う薬を使っていき、骨粗鬆症の治療を行っていきます。

薬を使っていく上で、合わないかも?と思うこともあるかもしれません。そんな時は、医師や薬剤師に相談し、適切な薬に切り替えていくことも必要でしょう。

継続しやすく、かつ効果が出やすい薬を医師と一緒に選択していきましょう。