骨粗鬆症の薬について解説
骨粗鬆症の薬ってどんなタイプのものがあるの?
今使っている薬って、本当に骨を強くするのかな?
骨粗鬆症の治療を開始している患者さんは、このように思っている人もいるのではないでしょうか?
骨粗鬆症治療として、まず選択肢に挙がる薬による治療。あなたが使っている薬は、どのようなタイプかご存知ですか?
今回の記事では、骨粗鬆症治療で用いられる薬について解説していきます。
Contents
骨粗鬆症治療で用いられる4種類の薬
骨粗鬆症治療で用いられる薬は主に4つのタイプに分けられます。
それでは、タイプ別に薬をご紹介していきます。
破骨細胞(骨を壊す細胞)の働きを抑える薬
破骨細胞の働きを抑える薬は、3種類あります。
- ビスホスホネート
- 選択的エストロゲン受容体作動薬(SERM)
- 抗RANKL抗体
それぞれ詳しく解説していきます。
ビスホスホネート
ビスホスホネートは、破骨細胞の活動を抑えて、骨が吸収されていく速度を抑えることにより、骨の状態を改善する薬です。
人間の骨は破骨細胞と骨芽細胞の働きで、骨を常に壊したり作ったりして、細胞が新しい状態を保っています。破骨細胞の活動が強くなり、骨の形成バランスが崩れることにより、骨粗鬆症になっていきます。
ビスホスホネートは飲み薬の他に、注射や点滴、ゼリーがあります。
代表的な薬品名は下記の通りです。
- リクラスト
- ボンビバ
- ボナロン
- アクトネルボノテオ
などです。
選択的エストロゲン受容体作動薬(SERM)
選択的エストロゲン受容体作動薬(以下SERM)は、エストロゲンのバランスを調整し、骨密度の低下を防ぐ薬です。
エストロゲンは、閉経とともに急激に減少していくとされています。エストロゲンが減少すると、破骨細胞の活動が活発になってしまい、骨密度が低下してしまいます。
SERMの注意点としては、エストロゲンには血液を固める作用があるため、血栓ができないように水分を多く取ったり、定期的に足を動かしたりして、血栓症にならないように注意が必要です。
SERMは飲み薬となっています。
代表的な薬品名は下記の通りです。
- ビビアント
- エビスタ
抗RANKL抗体
抗RANKL抗体は、破骨細胞が元気になるタンパク質(RANKL)を、破骨細胞に結合しないようにする薬です。
RANKLが破骨細胞に結合すると破骨細胞の活動が活発になり、骨の吸収が促進されてしまいます。
抗RANKL抗体は皮下注射を行います。
代表的な薬品名は下記の通りです。
- プラリア皮下注
骨芽細胞(新しく骨を作る細胞)の働きを促す薬
骨芽細胞の働きを促す薬は、副甲状腺モルモン薬と呼ばれています。
副甲状腺モルモン薬
副甲状腺ホルモン薬は、骨芽細胞の数を増やしたり、寿命を伸ばしたりする薬です。特に、
骨折の危険性が高い患者さんに処方されます。
骨芽細胞は、骨を新しく作る作用があり、破骨細胞の働きよりも骨芽細胞の働きが強くなると、骨が丈夫になっていくのです。
副甲状腺ホルモン薬の投与は注射で行います。
代表的な薬品名は下記の通りです。
- テリボン
- フォルテオ
どちらも自己注射が可能な薬です。
通院頻度や注射器の扱い易さ、家族のサポートなどを考慮して、通院して注射をするか、自分で注射をしていくか、選択できます。
破骨細胞の働きを抑え、骨芽細胞の働きを同時に促す薬
破骨細胞の働きを抑え、骨芽細胞の活動まで同時に促してくれる薬は、抗スクレロスチン抗体と呼ばれます。
抗スクレロスチン抗体
スクレロスチンは、骨芽細胞の働きを弱くするだけでなく、破骨細胞の活動も活性化してしまう厄介なタンパク質です。抗スクレロスチン抗体はスクレロスチンに作用して、骨を作る作用を促し、骨を吸収する作用を抑制する2つの作用がある薬です。
抗スクレロスチン抗体の投与は、注射で行います。
薬品名はイベニティーという薬で、月に1回、12ヶ月皮下投与します。
骨に必要な栄養素を多く取り入れる薬
骨に必要な栄養素を多く取り入れる薬は、カルシウム薬やビタミンK2薬、活性型ビタミンD3薬です。
栄養は、食事から摂ることが基本ですが、乳製品が苦手だったり、野菜が不足していたりするとカルシウムは不足してしまいます。そのため、薬で補う必要がある方もいるのです。
ビタミンKが不足すると、足の付け根の骨折になりやすいことがわかっています。
ビタミンDは、腸からカルシウムなどの吸収を促進する作用があるため、重要な栄養素です。日光浴でも体内で生成されますが、食品や薬で補うことも可能です。
まとめ
今回は、骨粗鬆症治療に用いられる薬について解説してきました。
骨粗鬆症の薬は、内服、注射、ゼリーでの摂取など、様々な形での投与の方法があります。それぞれ「骨を強くする」ことが目的ではありますが、骨を作るプロセスのどこをターゲットにしているのか、違いがお分かりいただけたと思います。
お手持ちの薬と、この記事を見比べて、医師がどのようなプロセスをターゲットとして考えているのか、考えてみても面白いですね。
・井本しおん. “骨粗鬆症治療薬ビスホスホネートの新たな役割-抗腫瘍効果の可能性.” 神戸常盤大学紀要 6 (2013): 9-19.
・浦野友彦. “SERM の分子医学.” 日本老年医学会雑誌 43.2 (2006): 147-151.
・ファイザー株式会社:抗RANKL抗体薬と副甲状腺ホルモン薬の作用
・astellas:イベニティーの作用機序
・公益財団法人骨粗鬆症財団:骨粗鬆症治療薬一覧