整形外科で治らない腰痛の原因について解説

腰痛は整形外科がいいんじゃないの?

整形外科で治らない腰痛にはどんなものがあるの?

現代日本人の10人に1人が経験するという腰痛。整形外科に通っているけど腰痛が治らないという経験がある人もいるのではないでしょうか。

腰痛は「腰の痛み」という症状であり、腰痛の裏には筋肉や筋膜の問題だけでなく、内臓疾患や菌感染による背骨の病気、ストレスによる問題などさまざまな原因が隠れています。

今回の記事では整形外科で治る腰痛や治らない腰痛、 整形外科で治らない場合は何が考えられるかを解説していきます。

腰痛の原因は何か?

腰痛の原因はさまざまですが、大きく分けて4つあります。背骨や周辺の筋肉などが原因の「脊椎と周辺筋肉由来の腰痛」、背骨の中を通る神経が原因の「神経由来の腰痛」、内臓や血管が原因の「内臓、血管由来の腰痛」、うつ病などの「心因性由来の腰痛」などがあり、それぞれ専門の科への受診が不可欠です。

腰痛の種類について

腰痛の種類は大きく分けて、以下の2つです。

  • 特異的腰痛
  • 非特異的腰痛

各項目について解説していきます。

特異的腰痛とは、整形外科でのレントゲン検査や MRI 検査などの画像検査によって原因が特定できる腰痛のことです。腰痛はさまざまな要因がからんでくるため、 原因を特定できる特異的腰痛は全体の約 15%ともいわれています。

「見える腰痛」とも呼ばれる特異的腰痛には「腰部脊柱管狭窄症」「腰椎すべり症」「腰椎椎間板ヘルニア」「腰椎分離症」「腰椎すべり症」などがあります。整形外科で原因が特定され、適切な治療が可能な腰痛は主にこの特異的腰痛です。

内臓や血管由来の腰痛は整形外科ではなく各内科での治療になりますが、原因が特定されるので特異的腰痛に分類されます。

非特異的腰痛とは、画像検査などで痛みの原因が見つからない腰痛のことで、腰痛全体の約85%を占め、別名「見えない腰痛」と呼ばれます。ただ、近年では非特異的腰痛も解明されてきており「筋筋膜性」「椎間板性」「椎間関節性」「仙腸関節性」の4つに分類されるようになりました。

腰痛の原因は1つだけではなく、いろんな要因が絡んでいることもあるため、 特に非特異的腰痛では病態の特徴などを総合的に判断して治療できる能力が求められます。

整形外科でできること

整形外科で主に行えることは以下の通りです。

  • 精密機器を用いての画像検査
  • 診断、治療
  • 手術
  • 理学療法士による理学療法

各項目について解説していきます。

整形外科ではレントゲンや CT、MRI などの精密機器を使って、身体に痛みがある部分がどのような状態になっているかを精密に画像で検査することができます。このような精密機器は医療機関でしか使用できません。

画像で病態を把握できるメリットは病態に合わせた最適な治療を行えることです。腰椎脊柱管狭窄症と腰椎すべり症はともに背骨内部の神経を圧迫腰痛や足の痺れといった同じような症状を引き起こす疾患です。

腰椎脊柱管狭窄症は腰椎の変形や靭帯が分厚くなるなどで脊柱管内部が狭くなることが原因で、 腰椎すべり症は腰椎を保護している靭帯組織が緩んでしまい、腰椎が前後にずれてしまうことが原因です。

原因が違えば、治療法はもちろん、日常生活で気をつけるべきことも変わってくるため、画像検査はとても有用といえます。

診断や病名を確定させる事が出来るのは医師のみです。診察や画像検査などから病態を把握して、病態に合わせた治療を行えます。

画像で原因が特定に至らない場合の腰痛では、痛みの慢性化を防ぐための治療戦略が行われます。

手術は身体に負担をかけるため、最終的な選択肢となることが多いですが、腰痛の痛みとともに排尿障害や排便障害、歩行障害など神経障害の症状が出ているケースでは、早急な手術が必要な場合があります。

神経は脳から背骨を通り、背骨の横側から手足や内臓など全身へ向かいます。

背骨から外側に出ている末梢神経は損傷しても再生可能、脳から背骨内部の中枢神経は再生不可能という性質があるため、大事な神経を守るための緊急手術というケースです。

リハビリ科がある整形外科では理学療法士による理学療法が受けられます。 理学療法士は整骨院や接骨院の柔道整復師と同じく医療系国家資格を持ち、身体のことに精通しています。運動療法や物理療法など腰痛改善に対するリハビリをしてくれます。

整形外科で腰痛が治らない時に考えられること

整形外科でなかなか腰痛が治らない時に考えられることは以下のものが挙げられます。

  • 筋筋膜性の原因がからんでいる
  • 内臓の病気(内臓疾患)
  • 心因性の腰痛

各項目について解説いていきます。

筋筋膜性の原因がからんでいる腰痛の場合、レントゲンなどの画像検査には映し出されません。それに加えて慢性腰痛では、姿勢のバランスや腰以外での筋肉や筋膜の不具合が原因になっているケースなど、いくつもの要因が複雑に絡み合うこともあります。

腰痛には内臓疾患やがんといった重篤な病気が隠れている場合があります。 内臓疾患の場合は不調をきたしている臓器が周囲にある神経を刺激するため痛みが起こります。腰痛が起こる内臓疾患には以下のものがあります。

  • 胃潰瘍、十二指腸潰瘍
  • 胆石
  • 胆嚢炎(たんのうえん)
  • 膵臓炎(すいぞうえん)
  • 泌尿器系
  • 尿路結石
  • 腎結石
  • 腎盂腎炎(じんうじんえん)
  • 前立腺がん
  • 婦人科系
  • 子宮内膜症
  • 子宮がん
  • 循環器系
  • 心筋梗塞
  • 解離性腹部大動脈瘤(かいりせいふくぶだいどうみゃくりゅう)

内臓疾患はそれぞれ「消化器内科」「泌尿器科」「循環器科」「婦人科」という各専門の科への受診が必要です。

腰痛をともなう内臓疾患の多くは、腰痛のほかに腹痛や血便、吐き気、嘔吐など別の症状が現れる場合や腰痛の痛み自体が強く激しいことが多いため、何科を受診すればよいかわからない場合は、複数の科が併設された総合病院の受診が望ましいです。

難しい場合はかかりつけ医または内科を受診しましょう。

ストレスや不安、鬱(うつ)などの心の不調が原因の腰痛です。1カ月以上続く原因がはっきりしない腰痛は心因性腰痛である可能性があり、「痛む場所が一定ではない」「気分によって痛みを感じたり、感じなかったりする」「午前中に痛むことが多い」「姿勢を変えても安静にしても痛みが続く」という特徴があります。

腰痛の原因がわからない不安だけでなく、痛みへの恐怖心や強い不安感、痛みのことばかり考えてしまうことなどから、少しのことでイライラしたりやる気が出なくなったりなどの心の症状が出る場合もあります。

心因性腰痛の治療は個人特有の「受け止め方のクセ」を変えてストレスを抱え込まないようにする 「認知行動療法」や、内科や整形外科、心療内科などの医師が連携して心理面・肉体面の両面から慢性腰痛の治療を行う「連携療法」(連携医療)があります。

まとめ

現代病の1つである腰痛。原因はさまざまです。整形外科では治らない腰痛もありますが、画像検査で異常が見つからない場合はひとまず特異的腰痛の可能性は除外されたと考えることもできます。

腰痛のほかにも気になる症状がある場合は、内科など別の科を受診することがおすすめです。医師は病態に合わせた最適な治療を選択してくれますので、一緒に治療を頑張っていきましょう。