手術をする前に知って得!変形性膝関節症の手術費用について

変形性膝関節症の手術費用について解説

通常、変形性膝関節症の初期は保存療法が選択される場合が多いです。保存療法とは、運動療法と薬物療法を併用して行われる治療法で、運動をしながら膝周りの筋肉や組織の状態を整え、ヒアルロン酸関節内注射や、鎮痛剤を用いて行います。

手術はどんな人が適応?

患者様の症状によっても違いますが、数ヶ月から1年ほど保存治療(運動療法、薬物療法やヒアルロン酸関節内注射)を施行しても治療効果が得られない場合に手術療法を検討します。

変形性膝関節症の重症度を図る「K-L分類(Kellgren-Lawrence)」という診断基準に基づいた場合、グレード3以上は手術治療の適応となることが多くなります。ただ、手術の適否を画像だけで判断することは稀です。画像上重症でなくても、ご本人が耐え難い痛みを訴えている場合は手術を検討しますし、逆に画像所見が重度でも痛みの程度が激しくない、またはご本人が手術を求めていない場合は無理に手術を勧めることはありません。

膝の骨や組織の状態、画像診断なども重要な情報ですが、もっとも重要視するのは「痛みによって日常生活に支障をきたしているかどうか」です。痛みのせいで歩けない、外に出れないとなると、運動する機会がぐんと少なくなるため、特に高齢の方の場合、心肺機能も低下しますし、その他の疾患を発症しやすくなります。これに当てはまる場合、何らかの手術療法を選択肢として考えることも出てきます。

変形性膝関節症の手術の種類ごとの手術費用

変形性膝関節症の手術費用は手術の方法によって異なります。

①関節鏡手術

膝の変形が進行していない、初期の変形性膝関節症に対して行われる治療法です。この手術では、関節内部の異常を関節鏡を用いて観察し、診断を行うと同時に、治療も行います。関節内ですり切れた半月板や軟骨のささくれを取り除いたり、増殖した滑膜を除去します。関節内の不要なものを取り去り、キレイにしていきます。

関節鏡を用いた小さな傷で手術できるので、1cm程度の傷2〜3箇所で手術を行うことが可能です。手術の方法として、傷口が小さい(損傷が少ない)というのはすごく重要で、傷が少なければ術後の経過も良く、治りも早いです。侵襲の少ない内視鏡手術では、最短で翌日に退院することができます。仕事に支障をきたす事なく治療を受けていただくことが可能です。

ただし、この治療では膝の変形は治すことができませんし、軟骨や半月板が再生するわけではないので、一時的に痛みを取ることが治療の目的となります。

入院期間は翌日〜1週間程度。費用負担は3割だと5万円、1割だと2万円が目安です。

②高位脛骨骨切り術(こういけいこつこつきりじゅつ)

骨切り術は比較的若い、40〜60代の仕事やスポーツを積極的に行っていきたい患者様に適応することが多い治療法です。膝が変形すると(O脚やX脚)体重が膝の中央にかからず、膝の内側や外側の軟骨や半月板などの、クッションになる組織が傷んでききます。

この膝の変形を、骨を切って矯正するのが骨切り術です。骨切り術でもっとも良く行われるのは「高位脛骨骨切り術」という手術です。

膝下の内側を切開し、脛骨(すねの骨)を斜めに切り、変形の程度に合わせて脛骨に角度をつけます。体重が膝の真ん中にかかるように調整し、人工骨を間に挟み、金属のプレートで固定をします。さらに半月板の損傷や軟骨の損傷が合併している場合は、それを修復する手術を追加で行うこともあります。

骨切り術のデメリットとしては、術後に切った骨の部分が治癒するまで時間がかかることが挙げられます。

骨切り部の痛みが取れにくく、固定した金属プレートを約1年後に抜去する必要があります。しかし、自分の骨を使用するため、膝の曲げ伸ばしが手術前と同じようにできます。よって、動きや運動に制限が出にくいのが特長です。そのため、肉体労働をされている方、マラソンや登山など膝の負担が多いスポーツ継続を希望される場合にも対応できることが骨切り術のメリットです。

入院期間は4週間程度。費用負担は3割で10~12万円、1割だと3~4万円になります。

③人工膝関節置換術(単顆置換・全置換)

変形した膝関節の表面を薄く削り、人工の関節(人工関節)に置き換える手術です。痛みの原因になる部位を金属で覆ってしまうため、術後早期から膝痛の改善に大きな効果があります。リハビリテーションでは、術後翌日から歩行を開始します。3〜4週間で階段昇降ができるようになったら退院となる場合が多いです。

手術では膝の前面を切開し、大腿骨、脛骨(および膝蓋骨)の痛んだ部分を削ります。金属の形に合うように骨を形成してゆき、骨セメントと呼ばれる接着剤を用いて人工関節を骨に固定します。膝蓋骨(お皿の骨)も必要に応じて置換します。

人工膝関節置換術には全置換術と単顆置換術の2種類があります。膝関節全体が痛んでいる場合は全置換術を行い、内側だけが痛んでいる場合は部分的に置換を行う単顆置換術を行います。単顆置換術は術後の回復が早い、違和感が少ないというメリットがあります。人工膝関節を行なっても、ゴルフ、卓球などのスポーツも楽しむことができます。

入院期間は手術内容によって幅があり、およそ2週間から3カ月の間です。費用負担は3割で24万円程度、1割だと8万円程度です。

高額医療制度も検討する

人工関節置換手術は、高額になることもあります。入院の費用は、高額医療制度※1、更正医療制度※2(身体障害者5級が必要)などが利用できます。入院前に市役所、区役所などで届け出ることで、かなり抑えることができます。年齢や個人・家族の年収により受けられる補助が変わりますので、詳しくは受診時にご相談ください。

参照)
1:厚生労働省保健局 高額医療制度を利用されるみなさまへ
2:厚生労働省 障害者福祉ホームページ