手術する前に必ず見て!変形性膝関節症の手術について解説

変形性膝関節症の手術について解説

膝が痛くなり、変形性膝関節症の手術を医師に勧められているが、どうしよう?と悩んでいる方もいらっしゃると思います。今回は、変形性膝関節症の主な手術の種類について説明します。

変形性膝関節症の進行段階

変形性膝関節症で進行段階を診断することは大変重要で、進行段階によって治療方法が変わってきます。変形性膝関節症の進行度は、X線写真でみられるとげ状の骨(骨棘)、関節のすきまが狭くなること(関節裂隙狭小化)、軟骨の下にある骨が硬くなること(軟骨下骨硬化)などの所見にもとづいて進行段階が判断されます。

分類法はいくつかありますが、国際的にはKL分類(Kellegren-Lawrence分類)がよく用いられています。KL分類では、膝関節に変形が全くない状態をグレード0とし、変形性膝関節症の進行度をグレード1~4の4段階(0を含めると5段階)に分類しています。一般的に、グレード2以上の場合に変形性膝関節症と診断されます。

グレード2以降になり、生活の多くの場面で膝の痛みにより、支障を来すようになると手術を検討することが一般的ですが、医師の判断や患者の意思によっても異なります。

変形性膝関節症の進行度分類「KL分類」※1)

KL分類では、グレード0が正常、グレード2以上が変形性膝関節症と診断されます。最重度はグレード4です。

グレード0

大腿骨(だいたいこつ:太ももの骨)と脛骨(けいこつ:すねの骨)の間の関節の隙間が十分にあり、関節の変形もない正常な状態。

グレード1

骨棘の可能性があり、関節裂隙狭小化(かんせつれつげききょうしょうか:大腿骨と脛骨のすきまが狭くなってしまう現象)の疑いがある状態。

グレード2

正常な関節と比較して、25%以下の関節裂隙狭小化がみられます。グレード1と同様、わずかに骨棘が確認できます。変形性膝関節症の初期段階といわれ、一般的にグレード2以上の場合に変形性膝関節症と診断されます。立ち上がりや正座、階段の昇降の際に、一時的な膝の痛みやこわばりを感じるなどの症状が見られるようになります。

グレード3

正常な関節と比較して、50~75%程度の関節裂隙狭小化や複数の骨棘、軟骨下骨硬化がみられるようになります。この段階になると、階段の昇降時などの膝の痛みが強くなったり、膝の曲げ伸ばしがスムーズにできなくなり、正座をすることが難しくなることがあります。人によっては膝に水がたまり、腫れてくることもあります。

グレード4

正常な関節と比較して、75%以上の関節裂隙狭小化がみられ、関節裂隙が消失することもあります。さらに大きな骨棘や明確な骨端部の変形、骨硬化もみられるようになります。この頃になると、じっとしていても常に膝が痛むようになったり、膝が完全に伸ばすことができなくなり、日常生活に支障をきたすようになってきます。

変形性膝関節症の手術の種類

手術の種類は主に以下のものになります。

①関節鏡手術

膝の変形が進行していない、初期の変形性膝関節症に対して行われる治療法です。この手術では、関節内部の異常を関節鏡を用いて観察し、診断を行うと同時に、治療も行います。関節内ですり切れた半月板や軟骨のささくれを取り除いたり、増殖した滑膜を除去します。関節内の不要なものを取り去り、キレイにしていきます。

関節鏡を用いた小さな傷で手術できるので、1cm程度の傷2〜3箇所で手術を行うことが可能です。手術の方法として、傷口が小さい(損傷が少ない)というのはすごく重要で、傷が少なければ術後の経過も良く、治りも早いです。侵襲の少ない内視鏡手術では、最短で翌日に退院することができます。仕事に支障をきたす事なく治療を受けていただくことが可能です。

ただし、この治療では膝の変形は治すことができませんし、軟骨や半月板が再生するわけではないので、一時的に痛みを取ることが治療の目的となります。

②高位脛骨骨切り術(こういけいこつこつきりじゅつ)

骨切り術は比較的若い、40〜60代の仕事やスポーツを積極的に行っていきたい患者様に適応することが多い治療法です。膝が変形すると(O脚やX脚)体重が膝の中央にかからず、膝の内側や外側の軟骨や半月板などの、クッションになる組織が傷んでききます。

この膝の変形を、骨を切って矯正するのが骨切り術です。骨切り術でもっとも良く行われるのは「高位脛骨骨切り術」という手術です。

膝下の内側を切開し、脛骨(すねの骨)を斜めに切り、変形の程度に合わせて脛骨に角度をつけます。体重が膝の真ん中にかかるように調整し、人工骨を間に挟み、金属のプレートで固定をします。さらに半月板の損傷や軟骨の損傷が合併している場合は、それを修復する手術を追加で行うこともあります。

骨切り術のデメリットとしては、

術後に切った骨の部分が治癒するまで時間がかかることが挙げられます。

骨切り部の痛みが取れにくく、固定した金属プレートを約1年後に抜去する必要があります。しかし、自分の骨を使用するため、膝の曲げ伸ばしが手術前と同じようにできます。よって、動きや運動に制限が少ないです。そのため、肉体労働をされている方、マラソンや登山など膝の負担が多いスポーツ継続を希望される場合にも対応できることが骨切り術のメリットです。

③人工膝関節置換術(単顆置換・全置換)

変形性膝関節症は変形が進んだ患者様に行う治療です。

変形した膝関節の表面を薄く削り、人工の関節(人工関節)に置き換える手術です。痛みの原因になる部位を金属で覆ってしまうため、術後早期から膝痛の改善に大きな効果があります。リハビリテーションでは、術後翌日から歩行を開始します。3〜4週間で階段昇降ができるようになったら退院となる場合が多いです。

手術では膝の前面を切開し、大腿骨、脛骨(および膝蓋骨)の痛んだ部分を削ります。金属の形にあうように骨を形成してゆき、骨セメントと呼ばれる接着剤を用いて人工関節を骨に固着します。膝蓋骨(お皿の骨)も必要に応じてポリエチレンで置換します。

人工膝関節置換術には全置換術と単顆置換術の2種類があります。膝関節全体が痛んでいる場合は全置換術を行い、内側だけが痛んでいる場合は部分的に置換を行う単顆置換術を行います。単顆置換術は術後の回復が早い、違和感が少ないというメリットがあります。人工膝関節を行なっても、ゴルフ、卓球などのスポーツを楽しむことができます。

変形性膝関節症の治療は変形の程度、年齢、筋力、生活の活動度など、多くのことを考慮して治療方法を選択します。どの治療法も一長一短ですので、主治医と相談して自分に合った治療法を選んでいきましょう。