骨粗鬆症の治療薬は?
骨粗鬆症と診断された場合、生活指導だけで元に戻すのは困難です。従って、骨粗鬆症の治療薬を服薬する必要があります。
- 骨代謝マーカー(TRACP-5b、P1NP)
- ビタミンDの血液検査
を行った上で、患者さん個々の骨粗鬆症の状態や生活環境に合わせて、
- 生活指導(運動や栄養の指導)
- 骨粗鬆症治療薬(カルシトニン製剤、ビタミンD製剤、SERM製剤、ビスホスホネート製剤、デノスマブ製剤、テリパラチド製剤、ロモソズマブ製剤)
をご提案致します。
骨密度と骨代謝マーカーの検査は約4カ月に1回行い、治療効果を判定し、都度治療法の継続・変更や中止などをご提案させて頂きます。
活性型ビタミンD製剤(エルデカルシトール、アルファカルシドールなど)
処方する活性型ビタミンD製剤は、市販のサプリの不活性型と違い、活性化されているため、吸収されやすく、効果的に骨密度を上昇させる薬です。副作用も少なく、多くの医院で処方されます。
SERM(サーム)製剤(バゼトキシフェン、ラロキシフェン)
女性ホルモンに近い性質を持ち、骨にしか効かない骨粗鬆症治療薬です。女性ホルモンはもともと破骨細胞の働きを抑えますが、同様の効果があります。
骨質を主に改善するとされ、まだ骨形成マーカーが比較的低くない75歳未満の骨粗鬆症には良い薬です。更年期障害のようなほてりなどの副作用はありますが、顎骨壊死のリスクもないため、安全性の高い薬です。女性ホルモンに近いため、女性限定になります。男性には使えないのが残念なところです。
ビスホスホネート製剤(アレンドロン酸、リセドロン酸、イバンドロン酸、ミノドロン酸、ゾレドロン酸など)
骨粗鬆症の第一選択薬として長年存在している、信頼性の高い薬です。
注射製剤もありますが、骨密度を大幅に上昇させる薬です。破骨細胞の働きを強く抑えこみ、骨が壊れるのを防ぎます。骨吸収マーカーが異常に高い方はとても良く効きますが、骨形成まで抑えてしまうので、骨芽細胞の働きがまだしっかりしている75歳未満ではSERM製剤の方がよい場合もあります。
内服する場合、起床時に飲み、朝食までは30分以上(最近は1時間空ける方がより効果があるようです)空ける、という飲み方をします。これはもともと消化管からの血液への吸収率がとても悪いため、そこに食べ物が混じると一気に吸収できなくなるためです。
副作用で多いのは、
- 逆流性食道炎
- 胸やけ
です。
歯科医師が最も気にする顎骨壊死ですが、とても稀(0.001%、1万人に1人)であり、確率的にはこの薬を飲んでいない健常者でも同程度発生しているため、気にしなくて大丈夫です。
デノスマブ製剤
半年に1回の皮下注射にて処方します。
ビスホスホネート製剤以上に強力に破骨細胞の働きを抑えるため、骨密度上昇は顕著で、5年以降もさらに骨密度が上昇し続けると言われています。しかし、他剤に変更すると途端に骨密度が大幅に低下するというデメリットもあり、辞め時が難しい薬でもあります。効いているのであれば、一生使っていればいいのかもしれません。顎骨壊死のリスクはビスホスホネート製剤と同じです。半年に1回薬価2.8万円(3割負担で8千円)くらいしますが、ビスホスホネート製剤半年分よりは安いかもしれません。
テリパラチド製剤
骨粗鬆症療薬のうち、唯一骨芽細胞の働きを促進させ、骨をどんどん作らせる薬です。骨粗鬆症の中でも「骨折の危険性の高い骨粗鬆症」限定の薬で、一生のうち2年間だけ、限定で保険適応になっています。
皮下注射で摂取します。
- 毎日
- 週2回
どちらかの自己注射の2種類があります。
週1回製剤は通院での皮下注射もありますが、強いため吐き気などの副作用が出やすくなっています。毎日製剤に関しては副作用は少なく、骨折後の骨癒合促進効果もあります。
週2回製剤の薬価は月50,000円程度で1割で5000円、3割で15,000円程度ですが、毎日製剤はやや薬価が下がりました。
ロモソズマブ製剤
2019年4月現在の骨粗鬆症治療薬の中では最も効果がある製剤と言われていますが、投与期間中の心血管疾患による突然死が相次ぎ、現在因果関係が否定できていないため心血管疾患の既往のある方は避けた方がよいと言われている薬です。
毎月1回1年間、両肩に皮下注射をします。こちらもテリパラチドと同様「骨折の危険性の高い骨粗鬆症」に限定して保険適応となっています。
骨粗鬆症治療薬で唯一、骨吸収を強く抑制しつつ、骨芽細胞の働きを促進する薬剤のため、骨密度の上昇は他のどの薬剤よりも顕著です。1年間使用したら、ビスホスホネート製剤などの骨吸収薬に切り替え、必要に応じて再投与が可能です。薬価はテリパラチドと同程度です。
全ての骨粗鬆症治療薬を採用し、骨粗鬆症で悩まれる方に、より多くの治療法をご提案させて頂きます。
骨粗鬆症は、
- 高血圧
- 高脂血症
- 糖尿病
などの生活習慣病と同じで、それ自体は無症状です。いかに早期発見し、骨折、入院することがないように治療できるかが重要です。
いのるとクリニックでは、患者様の骨の状態に応じた治療法を提案します。保険診療では行えない治療法もご用意しております。
日常生活上で改善できる点は?
活発に動き、”骨トレ”をしましょう
ウォーキングなどの運動は背骨の骨を強くし、ジョギングやジャンプなど、骨に強い刺激が加わる運動は足のつけ根の骨(大腿骨)を強くしてくれます。
週4回以上、1回8000歩(60~90分)以上は歩きましょう。できるだけ毎日、少ない時間でも良いので継続して習慣化することが大事です。
それ以外には、背伸びをしてから勢い良く踵を落とす「踵落とし運動」、リズム良く階段を昇り降りすることも効果的です。
カルシウムを摂りましょう
1日800mgのカルシウム摂取を目指しましょう。
牛乳(1Lで約800㎎)や小魚などを積極的に摂取しましょう。カルシウムのサプリも良いですが、サプリの取りすぎは高カルシウム血症になる可能性があるため、注意が必要です。ちなみに豆乳に含まれるカルシウムは牛乳の10分の1程度です。
ビタミンK、B6、B12を摂りましょう
ビタミンKはカルシウムを骨に吸着させ、骨の質を良くします。納豆や緑黄色野菜に多く含まれます。ワーファリンを飲んでいる方は薬が効きにくくなるため、注意が必要です。
骨の質には、ビタミンDやビタミンKだけでなく、ビタミンB6やビタミンB12も重要になります。
日光を浴びましょう
10時から15時の直射日光を肌に浴びることで、体内でビタミンDの約9割が作られます。紫外線が苦手な方は手のひらでも良いので毎日浴びましょう。
禁煙をしましょう、ストレスを減らしましょう
タバコなどの酸化ストレスは骨を弱くします。骨粗鬆症の方は特に禁煙を心掛けましょう。
女性は45歳を過ぎたら精密検査を受けましょう
女性は45歳を過ぎたら骨密度検査(腰椎+大腿骨)+血液検査(骨代謝マーカーとビタミンD)の精密検査を受けましょう。
痩せている方(BMIが18を切る方)も注意が必要
※BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)⇒BMI=22が標準体重
BMI18以下で痩せている方は、骨に掛かる負荷が減ることや、低タンパク質や低カルシウムなど栄養状態があまり良くない場合が多いため、特に骨が弱くなりやすいです。骨は体重が掛かることで強くなります。バランス良く食事を十分摂り、標準体重に近づけるようにしましょう。
参考症例
①49歳 細身の女性
ぎっくり腰で受診。レントゲンで骨がかなり透けて見えていたため、骨粗鬆症かもしれないということで、骨粗鬆症検査を行いました。結果、大腿骨の骨密度が63%で、骨粗鬆症になっていました。骨年齢は約90歳でした。
幸い、海綿骨構造指標(TBS)は正常で、骨代謝マーカーで破骨細胞の働きも正常でした。特にまだ閉経したわけでも、過去に女性ホルモンを抑えるような治療も受けておらず、基礎疾患もなく、骨粗鬆症の原因は不明でした。しかし、良く聞くと、10代の頃に過剰なダイエットをして、体重が30㎏台になっていたことが何年かあったようでした。
BMIが18を切るような低体重は骨密度が著しく低下します。
この方は、TBSの数値が良かったため、大腿骨骨密度が上がりやすいビスホスホネート製剤の内服を開始してもらい、2年間で大腿骨骨密度70%を目指すことになります。
大阪京橋イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック
医師勤務日:守谷(月曜・火曜・木曜・金曜)/林(水曜)/小船(土曜)/荒川(日曜)
休診日:第3木曜日の午後、祝日、年末年始