膝治療の常識が激変!変形性膝関節症の再生医療とは!?

変形性膝関節症の再生医療とは

変形性膝関節症で膝の痛みが強い場合、薬物治療や運動療法を行い、痛みの軽減や予防などを行います。しかし、効果が感じられない場合は手術療法(人工膝関節など)で膝関節を人工的な素材に置き換えることで、身体機能の維持や痛みの軽減を目指します。再生医療では、こうした人工物に頼らず、私たち自身が持つ組織の再生能力を活かし、膝の痛みの緩和を目指します。

変形性膝関節症とは

クッションである軟骨が、加齢や筋肉量の低下などによりすり減って、痛みが生じる病気です。また、関節をおおっている関節包(かんせつほう)と呼ばれる繊維膜の内側に炎症が起こるため、黄色味がかった粘り気のある液体が分泌され、いわゆる「膝に水がたまった」状態になります。軟骨がすり減った分、膝関節の骨と骨のすき間が狭くなって骨のへりにトゲのような突起物ができたり、骨が変形したりします。進行すると、痛みが強くなり、生活に支障が出てきます。

再生医療とは

再生医療とは、幹細胞等を用いて、臓器や組織の欠損や機能障害・不全に対し、それらの臓器や組織を再生し、失われた人体機能の回復を目指す医療です。現在の医薬品や治療法では難しいものや、治療法が確立されていない疾患に対して新たな治療法となる可能性があります。

再生医療が進めば、人体の臓器や組織における細胞の老化が原因の疾患について、将来的に、より根本的な原因に直接作用できる治療や、高齢社会においてQOLの向上に貢献できることが期待されています。

また、自身の血液や細胞を利用しますので、副作用が少ないというところが特徴です。手術を受けることができない方でも行えるため、新たな方法として注目を集めています。

再生医療の対象や金額

最新治療である再生医療は、安全性の確立や効果が立証されています。しかし、保険診療として認められるほどの臨床データが揃っていないため、現時点では自費診療となります。自費診療になるので医療機関により金額が異なります。

対象

注射や装具では効果が得られない

ヒアルロン酸注射を受けてきたが、痛みが変わらない。装具も行なっているが満足した結果が得られていない。

高齢で手術できない

高齢になり手術ができないと言われたり、持病があるため手術をするのに抵抗感がある。

入院したり、人工関節にはしたくない

体に金属を入れるのに恐怖心があったり、入院すると家のことが出来ないので困ってしまう。

スポーツ活動を継続していきたい

膝に負担がかかるスポーツをしているが、このまま継続してスポーツをしていきたい。

費用の目安

幹細胞治療が100万円前後、PRP治療は3万円〜、PRP-FD療法やAPS療法は30万円前後というのが一般的な価格帯です。金額は医療機関によって違うため、医療機関に問い合わせてみることをお勧めします。

再生医療の2つのやり方

現時点(2023年3月)では、変形性膝関節症の再生医療には2つのやり方があります。

PRP療法

PRP(多血小板血漿)とは、自己血を遠心した後の“血小板”を多く含む“血漿”層のことです。血漿や血小板には組織の修復を促進する成分が含まれています。例えば、血小板には、止血(組織損傷部位など)過程で重要な役割を果たすほか、さまざまな成長因子を含みます。これらの成長因子の役割により、生体が本来持つとされる自然な治癒反応を促進するといわれています。

PRP療法のメリット

  • PRPの精製するのに大きな設備が不要
  • PRPは素材が安全のためそのまま治療に用いられる
  • 自分のPRPを使用する限り感染のリスクは極めて低い
  • 筋肉、骨の損傷に対する治療として期待できる

PRP療法のデメリット

  • 注入部に感染・神経損傷・血管損傷など病的な変化を来すことがある
  • 注入部およびその周囲の筋肉や骨の痛みが生じることがある
  • アレルギー症状が誘発されることが稀にある
  • 血管内に投与されると血栓症を発症するリスクがある

間葉系幹細胞(MSC)療法

幹細胞療法は、1970年代に発見されて以来、再生医療を始め、さまざまな臨床領域の研究者から注目を浴びている組織幹細胞(複能性幹細胞)です。それぞれの環境に応じて様々な組織や細胞に分化できる細胞です。この分化能をもつ幹細胞は、組織や臓器を構成するのに必要な細胞に変化して損傷した組織を修復します。

幹細胞療法のメリット

  • 多くの変性性疾患や炎症性疾患に対して強力な医療ツールとして台頭している
  • 損傷した部位において、分化して新しい組織を作る
  • 分化した周囲の組織を活性化して修復機能を促すはたらきもある
  • 幹細胞を一度分離し適切に保管すれば生涯治療に応用できる
  • 創傷治癒や瘢痕治癒を増強する重要な遺伝子を刺激する効果もある

幹細胞療法のデメリット

  • 幹細胞周囲の環境が治療効果に影響してしまう
  • 治療に必要な細胞数を確定することが難しい
  • 幹細胞の質や寿命に個人差がある
  • 幹細胞を培養する環境によって細胞の質が異なる