変形性膝関節症の原因について解説
膝の痛みで悩んでいる方は大変多いです。なぜ膝関節が痛むのか?原因を知っておきましょう。
膝関節の構造
膝関節は、3つの骨が合わさって構成されています。
- 大腿骨(太ももの骨)
- 脛骨(すねの骨)
- 膝蓋骨(お皿:しつがいこつ)
です。
大腿骨(太ものの骨)と脛骨(すねの骨)の上に大腿四頭筋(ふとももの筋肉)が付着し、膝蓋腱(しつがいけん)が膝蓋骨(お皿)を抑えています。
膝を曲げ伸ばしするとき、大腿四頭筋が収縮し、脛骨が滑り転がるようにして膝関節を曲げ伸ばししています。
この3つの骨が接触する部分は弾力のある柔らかな軟骨で覆われ、クッションの役目を果たしています。また大腿骨と脛骨の間にある半月板にも、関節に加わる衝撃を吸収する役目があります。
膝関節は、骨、軟骨、靱帯、筋肉、腱などから構成されており、正常な膝関節はスムーズに動かすことができ、歩行や方向転換、その他の多くの動作を痛みを感じることなく行うことができます。
変形性膝関節症とは?
正常な膝関節の構造は上記の通りですが、老化などにより、関節の構造に変化が生じることがあります。
変形性膝関節症(膝OA)の日本における患者数は2530万人(男性860万人、女性1670万人)、とされています。※1)高齢化の中、患者数は年々増加しています。 発病率は高齢になるほど上がります。
50歳以降の男女比(患者割合)では、女性のほうが男性よりも1.5倍~2倍多いことがわかっています。
日本人の場合、すねの骨が内側に弯曲しているので、体重のかかり方から内側の軟骨ばかりが擦り減することでO脚になり、変形性膝関節症に発展しやすいといわれています。(人種によってO脚、x脚になりやすいなど、異なることが知られています。)
変形性膝関節症になると、一般に膝の違和感から痛みへと発展し、最終的に極端なO脚への変形や歩行困難などの症状をもたらします。
変形性膝関節症の原因
変形性膝関節症の原因は、大きく
- 一次性(原発性):明らかな原因がなく、加齢や慢性的な刺激によって発症
- 二次性(続発性):外傷や炎症性・代謝異常疾患などに伴って発症
の2つに分けられます。
変形性膝関節症の多くは、なんらかの原因で徐々に進行する“一次性”の変形性膝関節症になります。一次性の変形性膝関節症の原因を以下にご紹介します。
加齢
変形性膝関節症の原因は関節軟骨の老化によることが多く、肥満、O脚、閉経後のホルモンバランスの変化や遺伝も関与しています。布団の上げ下ろしや正座・あぐらによって膝に負担をかけやすい日本の生活習慣も負担が掛かりやすいと言われています。
年齢を重ねるにつれて膝に繰り返し外力がかかり、軟骨や骨にダメージが積み重なっていきます。関節のクッションと潤滑材の役割をする軟骨が摩耗していき、変形性膝関節症が高度に進行すると軟骨が消失することもあります。
軟骨が摩耗して薄くなったり消失したりすることで、膝の中の隙間が狭くなります。これが変形性膝関節症の始まりです。さらに進行することで軟骨がカバーしていた骨にも負担が強まり、生体の自然反応として骨が異常増殖し、トゲ状の骨「骨棘(こつきょく)」を形成してしまうことも特徴的な所見です。
さらに、年齢を重ねると膝を支える筋力も低下します。もとは膝周辺の筋肉が負担していた体重負荷が軟骨や骨へと集中し、これらの組織を損傷させて変形性膝関節症を増悪させていきます。
変形性膝関節症を発症し、膝に痛みを感じるようになると、外出や運動を控えることでさらに筋力が低下し、変形性膝関節症を一層進行させるという悪循環に陥りかねません。
このように、加齢は変形性膝関節症の発症、そしてその助長を促す原因の代表とされています。
性別(女性)
変形性膝関節症は圧倒的に女性に多い疾患です。
実際に、50歳以降の男女比(患者割合)では、女性のほうが男性よりも1.5倍~2倍多いことがわかっています。つまり性別に由来する原因があると考えられます。その要因のひとつはホルモンにあると考えられます。
男性ホルモンの一種であるテストステロンは筋肉の形成に関わるホルモンですが、女性はこのテストステロンの血中濃度が少ないです。
つまり、女性は男性に比べて筋肉が少ない傾向にあり、膝周辺の筋力も女性の方が平均的に少なくなっています。このことから、女性は膝にかかる体重や負荷を筋力で吸収しづらいので軟骨や骨へのダメージを受けやすく、その結果、女性の方が変形性膝関節症に罹患しやすいと考えられます。
また、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンは軟骨の形成に必要です。しかし、女性は閉経後、このエストロゲンの分泌量が減少してしまうため、閉経によるエストロゲン分泌量減少も女性特有の変形性膝関節症の原因と考えられます。
女性ホルモンは骨粗鬆症との関連も指摘されており、女性ホルモンが減少すると骨がもろくなりやすいため、膝の骨ももろくなることが想像されるので変形性膝関節症に発展する原因と考えられます。
肥満
年齢に関わらずリスク因子となるのは、肥満です。特に急激な体重増加は、膝を痛めやすく、注意が必要です。
膝にかかる負担は、歩く時には体重の約3倍、階段昇降時には約7倍にもなるといわれています。つまり、体重が1kg増えると、歩く際に膝にかかる負担は約3kg、階段の昇降時は約7kg増えることになります。
急激な体重の増加は変形性膝関節症の大きなリスクとなります。体重が増えて膝に痛みを感じるのであれば、無理のない範囲で体重を落とすことを心がけましょう。
体重増加により膝を傷めると運動を避けてしまいがちですが、そのために運動不足になり、さらに体重が増加するといった悪循環に陥ることが少なくありません。食事制限によるダイエットを行いながら、軽い運動から始めるのが良いでしょう。
出典・参考)
1 ROAD(Research on Osteoarthritis/osteoporosis Against Disability)プロジェクトのベースライン調査